研究室 Feed

2023年4月10日 (月)

3年ぶりにスプリングキャンプを開催しました

 3月中旬に獣医学生向けのスプリングキャンプ(5日間の実習)を開催しました。本実習はVPcampを介して受入を実施しており、今回は約7倍の応募者の中から選ばれた6名の学生が全国各地から集まりました。新型コロナウイルス感染症の影響で2年間開催中止が続いていたため、学生たちも再開を待ち望んでいたようです。

 本実習の一番の目的は繁殖シーズンに馬の生産を学ぶことですので、繁殖学や繁殖牝馬と子馬の管理を中心にカリキュラムを組みました。繁殖学実習での直腸検査や親子の引き馬、採血、レントゲン撮影、造鉄見学など、大学では得られない経験ができたのではないでしょうか。職員の話に真剣に耳を傾け、積極的に質問する姿が印象的でした。この経験を糧に、良い獣医師になってくれることを願っています。

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講義

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直腸検査

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ルイゼリアクィーン2023親子の引き馬

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繫殖牝馬の採血

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造鉄見学

2023年2月17日 (金)

2023年 ホームブレッド第1号・第2号が誕生しました

 2月12日22時頃、今シーズンのホームブレッド第1号となるルイゼリアクィーン2023が誕生しました。大きな星が特徴的な牝馬です。父は2022年より供用が開始されたミスチヴィアスアレックスで、この世代が初年度産駒となります。

S__114245640_2 ルイゼリアクィーン2023

 また、16日7時頃には第2号となるブレシッドサイレンス2023も誕生しました。母馬によく似た白斑をもつ牡馬で、父はデクラレーションオブウォーです。

S__114245638 ブレシッドサイレンス2023親子

 日高育成牧場では出生翌朝(出生8~12時間後)に子馬の血中免疫グロブリン濃度を測定して、初乳免疫移行の確認を行っています。今回生まれたルイゼリアクィーン2023は出生3時間以内に哺乳行動を確認していたものの、翌朝の母馬の乳房が大きく腫れていたこと、また子馬の免疫グロブリン濃度が低かったことから、十分な初乳摂取ができていなかった可能性が考えられました。子馬が初乳から免疫抗体を吸収できるのは生後24時間以内と言われており、中でも6時間以内が最も吸収率が高いと言われています。そのため分娩直後の初乳(搾乳し、冷凍保存しておいたもの)とその場で搾乳した母乳の強制投与を行い、初乳免疫の獲得を促しました。

 処置翌朝(出生翌々日)、子馬の血中に十分量の免疫移行が確認できたことから、初乳免疫獲得は成功したと考えられました(ここで移行確認ができなければ、血漿輸血の検討も必要です)。その後数日間母馬の乳房を確認したところ大きな腫れは引いたことから、子馬の哺乳は上達し十分な栄養摂取ができていると判断しました。

 子馬の初乳免疫移行にはタイムリミットがあり、新生子馬は感染症に弱いためその確認は極めて重要です。免疫グロブリン濃度の測定が難しい場合でも、母馬の乳房の状態から母乳摂取状況を推察することで、子馬の健康状態把握の一助となるかもしれません。

S__114245635 哺乳の様子

2022年11月 3日 (木)

宮崎育成牧場を訪問してきました

 JRA育成馬を用いた研究のため、宮崎育成牧場を訪問してきました。宮崎で育成、2020年ブリーズアップセールにて売却され、ファン投票によってアイドルホースに選出されたヨカヨカや、2022年に売却されたウメムスビなどの活躍もあり、宮崎育成牧場に注目されている方もいるかもしれません。現在リニューアル工事中のため一部閉鎖されていますが、公園地区には新しい遊具などが設置、ウインズ宮崎も新しく改築されており、来年4月にオープンが予定されています。

 宮崎では温暖な気候を生かし、昼夜放牧や青草給与を積極的に行うことで馬体の成長促進をはかっているそうです。放牧地では馬たちが自由に過ごしている姿がみられました。日高と同様、ドライビング実施時からゲート馴致を開始し、時間をかけながら馬の理解を促しています。7月に日高から移動したJRAホームブレッドの2頭にも再会することができました。2頭はすっかり宮崎に馴染んでおり、順調に馴致調教を積んでいる様子でした。来年のブリーズアップセールが楽しみになるとともに、わたしも育成馬たちに負けないよう、研究やその他業務に精進してまいりたいと思いました。

Photo_2放牧地の様子

21ゲート馴致の様子(タムロブライト2021)

21_5ホームブレッドとの再会(フーダムール2021)

2022年7月 4日 (月)

マイクロチップ

 7月に入って浦河も急に気温が高くなり、放牧中の馬たちも汗ばみはじめました。暑い日中には水桶に集まり、我先にと水を飲む姿もみられます。

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放牧地の水桶に集まる親子たち

 さて、本日はJRAホームブレッド当歳馬8頭にマイクロチップの埋込を行いました。

 馬用のマイクロチップは固有の番号を書き込んだ長さ14.6mm、太さ2mmの小さなチップです。これを体内に埋め込み、専用の読み取り機で番号を読み取ることで個体照合を行います。先月(2022年6月)には販売される犬猫へのマイクロチップ装着を義務付ける改正動物愛護法も施行されたことから、関心のある方もいらっしゃるかもしれません。競走馬ではイギリスやアイルランドにおいて1999年の産駒から個体照合方法のひとつとして導入されています。日本では2007年以降の産駒に対して血統登録時の埋込(マイクロチップ番号の登録)を義務付けており、マイクロチップがなければ競馬に出走することはできません。それまで毛色や白斑、旋毛などの馬体特徴を用いて照合されていましたが、マイクロチップの導入によってより短時間に正確な個体照合が可能となりました。

 競走馬の場合、マイクロチップは左側頸部中央の項靱帯付近に専用の注射器で埋め込まれます。獣医師によって素早く埋め込まれたため、当歳馬たちも駐立したまま我慢できました。これでまた一歩競走馬に近付いたね。

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マイクロチップを埋め込まれるタキオンメーカー2022(牡:父エスケンデレヤ)

2022年4月 8日 (金)

新年度がスタートしました

 4月に入って放牧地の雪もおおかた融け、浦河も少しずつ春めいています。先月19日にスノーボードロマン2022(めす:父アニマルキングダム)が誕生し、今シーズンの出産は全頭終了しました。日々心もからだも大きく成長している子馬たち。放牧地では元気よく駆けまわったり、お昼寝をしたりと、広い世界を楽しんでいるようです。Photo_8スノーボードロマン親子(2022めす:父アニマルキングダム)

 

 さて、新年度のスタートとともに繁殖班に新しい仲間を迎えました。高校馬術部での活動を通じて馬に魅せられ、入会してくれました。さっそく子馬の扱い方や親子の引き馬などを先輩職員から学んでいます。慣れないことも多く大変だと思いますが、全力でサポートします。これからよろしくお願いします!Photo_9新入職員とタキオンメーカー親子(2022牡:父エスケンデレヤ)

2022年1月12日 (水)

出産シーズン

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。本年もJRA日高育成牧場をよろしくお願い申し上げます。

 年が明け、生産地では出産シーズンが始まりました。JRA日高育成牧場もホームブレッド第1号の分娩予定日まで残り1ヶ月をきり、分娩準備が本格化してきたところです。馬房内の監視カメラを起動させ、妊娠後期の流産原因となる馬鼻肺炎対策としてアームカバーやタイベック防護服の着用、長靴等の消毒も徹底しています。

 無事に元気な子馬たちが生まれてくることを職員一同祈っています。

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アーツィハーツ号(デクラレーションオブウォー受胎)

2021年2月25日 (木)

今年も元気な子馬が生まれました!

 まだまだ冬の寒さが厳しい浦河ですが、日高育成牧場では今朝方、今年最初の子馬が生まれました。お母さんは一昨年にアメリカから日本にやってきたのですが、日本の寒さにも負けず無事に元気な初子を産んでくれました。分娩も順調そのもので、破水から分娩まで15分の安産、子馬が立ち上がるまでの時間も1時間のスピード出産でした。少し小柄な女の子ですが、片時もお母さんの傍から離れず、すでに甘えんぼの片鱗を見せています。順調に成長して立派な競走馬になるんだよ!

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2020年10月12日 (月)

ouch!!

 血統登録審査は馬の戸籍に相当する生まれた最初の登録であり、競走馬を目指すサラブレッド にとっては決して避けて通ることはできません。競馬に関わるサラブレッドには様々な登録が存在しますが、この血統登録審査は、生まれて初めての登録になります。

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 血統登録審査は、書類審査、実馬審査および毛根採取の順に行われます。書類審査は、母馬の身分を証明する繁殖登録証明書と父馬を証明する種付証明書を元に記載事項に間違いがないか確認されます。その後、実馬検査として実際の子馬をみながら、その特徴を一つ一つ確認したり首のマイクロチップ を読み取る作業が続きます。最後にDNA型で親子判定をするためのタテガミを抜いて審査が終了します。ちょっと痛くて思わずouch!!って叫んじゃったけど、競走馬になるためだもんね、仕方ないよね。

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2020年8月21日 (金)

別れ・・・

 8月も残りわずかとなりましたが、北海道らしくない蒸し暑い日が続いています。

 日高育成牧場では、今週から当歳馬の離乳が始まっています。離乳は、母馬が翌年の出産に万全の態勢で望めるよう授乳を断ち切る目的のほか、子馬側にも飼料給与で成長をコントロールする目的があります。野生の馬では分娩数ヶ月前にあたる年明け頃(子馬は9〜10ヶ月齢)で離乳がみられますが、生産牧場における離乳の適期は、体重が220kg程度まで成長して1〜1.5kgの飼料摂取が可能となる、5〜6ヶ月齢とされています。また、離乳時期の決定には、これら栄養面の要因のほかに母子の精神面への影響も考慮する必要があります。

 離乳の方法については様々な方法が試行されていますが、少し前までは母子の厩舎から子馬を一斉に離れた厩舎に移動させる方法が一般的でした。しかし、この方法だとストレスから子馬の発育に悪影響が現れたり、母馬や子馬が大騒ぎして怪我をすることがある点が問題でした。この問題を解決するため、日高育成牧場では数年前から「間引き法」を導入しています。間引き法とは、離乳に先立って母子の群れに子なしの乳母を混ぜることで予め群れに慣らしておき、数週間かけて数頭づつ数回に分けて母馬を間引いていく方法です。この方法でも母馬がいなくなった子馬は母馬を探して騒ぎ出しますが、群の大半を占める他の仲間は落ち着いているため、比較的早く子馬が落ち着くようになります。最終的に群れには子馬と乳母だけが残る形となりますが、乳母がいることで子馬もとりあえず安心感を覚えているようです。

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 今年の1回目の離乳を行ったこの日、長い間子馬たちを見守ってくれていたスタッフの一人が育成牧場から旅立って行きました。新天地でのご活躍をお祈りしています。

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2020年7月10日 (金)

ホースアカデミー 撮影終了

 みなさんは、「新・馬学講座ホースアカデミー 」という番組をご存知でしょうか?ホースアカデミー は、(一財)グリーンチャンネルで10年近くも放映されている長寿番組なのですが、毎年、軽種馬生産や育成調教に関する新たな知見やJRA日高育成牧場での研究成果について、牧場関係者の皆様を対象に情報発信しています。この番組は(公社)JBBAの軽種馬高度化指導研修事業の一環として制作されており、毎年、個性豊かな8名の講師が軽種馬に関する様々なテーマについて、分かりやすく誰でも実践できるように解説する30分の番組です。本年放映予定のものについては、今週火曜日から4日間かけて日高育成牧場で収録され、来月8月から来年3月までの間、1ヶ月毎にテーマを替えて放送される予定です。今年も選りすぐりの8題をご提供しますので、どうぞご期待ください!

過去に放映された番組は、DVDに収録して各地の講演会等で配布している他、YouTubeでもご覧いただけます。

番組の放映予定はこちら

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