ホームブレッド Feed

2020年10月12日 (月)

ouch!!

 血統登録審査は馬の戸籍に相当する生まれた最初の登録であり、競走馬を目指すサラブレッド にとっては決して避けて通ることはできません。競馬に関わるサラブレッドには様々な登録が存在しますが、この血統登録審査は、生まれて初めての登録になります。

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 血統登録審査は、書類審査、実馬審査および毛根採取の順に行われます。書類審査は、母馬の身分を証明する繁殖登録証明書と父馬を証明する種付証明書を元に記載事項に間違いがないか確認されます。その後、実馬検査として実際の子馬をみながら、その特徴を一つ一つ確認したり首のマイクロチップ を読み取る作業が続きます。最後にDNA型で親子判定をするためのタテガミを抜いて審査が終了します。ちょっと痛くて思わずouch!!って叫んじゃったけど、競走馬になるためだもんね、仕方ないよね。

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2020年8月21日 (金)

別れ・・・

 8月も残りわずかとなりましたが、北海道らしくない蒸し暑い日が続いています。

 日高育成牧場では、今週から当歳馬の離乳が始まっています。離乳は、母馬が翌年の出産に万全の態勢で望めるよう授乳を断ち切る目的のほか、子馬側にも飼料給与で成長をコントロールする目的があります。野生の馬では分娩数ヶ月前にあたる年明け頃(子馬は9〜10ヶ月齢)で離乳がみられますが、生産牧場における離乳の適期は、体重が220kg程度まで成長して1〜1.5kgの飼料摂取が可能となる、5〜6ヶ月齢とされています。また、離乳時期の決定には、これら栄養面の要因のほかに母子の精神面への影響も考慮する必要があります。

 離乳の方法については様々な方法が試行されていますが、少し前までは母子の厩舎から子馬を一斉に離れた厩舎に移動させる方法が一般的でした。しかし、この方法だとストレスから子馬の発育に悪影響が現れたり、母馬や子馬が大騒ぎして怪我をすることがある点が問題でした。この問題を解決するため、日高育成牧場では数年前から「間引き法」を導入しています。間引き法とは、離乳に先立って母子の群れに子なしの乳母を混ぜることで予め群れに慣らしておき、数週間かけて数頭づつ数回に分けて母馬を間引いていく方法です。この方法でも母馬がいなくなった子馬は母馬を探して騒ぎ出しますが、群の大半を占める他の仲間は落ち着いているため、比較的早く子馬が落ち着くようになります。最終的に群れには子馬と乳母だけが残る形となりますが、乳母がいることで子馬もとりあえず安心感を覚えているようです。

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 今年の1回目の離乳を行ったこの日、長い間子馬たちを見守ってくれていたスタッフの一人が育成牧場から旅立って行きました。新天地でのご活躍をお祈りしています。

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2020年2月28日 (金)

ホームブレッド第一号が誕生しました

 まだまだ朝晩の寒さが残りますが、日高育成牧場では2020年のホームブレッド(JRA日高育成牧場生産馬)の第一号が誕生しました!お母さんは元JRA育成馬のアイハヴアジョイ(母父アイルハヴアナザー)、お父さんは今年本邦初年度産駒がデビューするマクフィという血統で、順調に育ってくれればお母さん同様にJRA育成馬になる予定です。

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 虚な瞳と額の大きな流星がとっても印象的ですが、生まれて40分でしっかりと自分の足で立ち上がった元気な女の子です。日高育成牧場には、分娩を控えた繁殖牝馬があと8頭在厩していますが、まずは順調に生まれてくれることを祈るばかりです。

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 この子が産まれた今日は、今まで一緒に働いてきた仲間とのお別れの日でもありました。新天地でのご活躍を祈ります。

2019年8月 2日 (金)

ホームブレッドの血統登録

 今日は当歳ホームブレッド達の血統登録を行いました。

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 審査では、書類と実馬との照合による個体鑑別マイクロチップについての審査、DNA型親子判定検査のための毛根サンプルの採取を行います。

 マイクロチップは、予め頸に打ち込んでおきました。

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 毛根サンプルの採取は、たて髪から行います。

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 引き抜いた毛根サンプルは、競走馬理化学研究所に送られDNA親子鑑定が行われます。

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 かつて親子判定は血液型で行われていましたが、DNA鑑定に代わり、その精度は格段に上がりました。

 以前、2回目の種付けで1回目の種付けとは異なる種牡馬を交配する「配合変更」を行って誕生したホームブレッドの中に、血統登録時のDNA親子鑑定で1回目の種付けの種牡馬の産駒であることが判明した事例がありました。1回目と2回目の交配は1周期も開いていたにも関わらず・・・不思議なこともあるようです。

 暑い中、ジャパンスタッドブックインターナショナルの方々、有難うございました。

2019年2月24日 (日)

ホームブレッド第1号の誕生

今年の第1号ホームブレッド(JRA生産馬)が誕生しました!

Img_9858_2 アイハヴァジョイの19(♂)父マクフィー似の鹿毛でした。

その日は、15:30に集牧してウォーキングマシン運動を行い(4㎞/h*30min)、馬房に入れて乳汁を測定したらpH6.4, Brix31.2!

「まだ乳ヤニも付いていないけど産まれるんじゃね?!」ということで、汗モニターを腰に付けて分娩に備え、監視モニターを眺めたら「もう破水してんじゃん!」ということで、17:30に無事安産でした。破水後、胎位を確認した後は自然分娩。娩出後も10分以上も臍帯が切れることなく、胎児の胎盤中の血液はすべて回収されました。後産は分娩後30分で出てしまいました。3産目の母馬は授乳も上手で安心して見守ることが出来ました。

Img_9869まだ少し後肢の繋が硬いけど、経過観察しながら様子を見ていきたいと思います。

翌日、元気に母馬に付いて歩きます。

今年から新生子不適応症候群(NMS:Neonatal Maladjustment Syndrome)に関する調査の一環として、生後直後・1日後・3日後・7日後にプロジェステロン(P)値を免疫発光測定装置(パスファースト) により測定し、正常馬およびMNS馬の推移についてデータを蓄積しています。パスファーストは、血漿サンプルを用いて僅か17分で測定結果の出る装置です。この馬に関しては、分娩後40ng/mL以上あったP値は、翌日には4.9ng/mlまで低下していました(NMSでは上昇することが知られています)。

生産育成研究室では、これからも現場での応用し易い技術の検討も実施していく予定です。

2018年12月17日 (月)

第70回 朝日杯フューチュリティステークス

2018年12月16日(日) 5回阪神6日11R 「第70回 朝日杯フューチュリティステークス」に日高育成牧場の生産馬であるイッツクール号が出走するため、我々も競馬場に駆け付けました。

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この日は、6Rの「メイクデビュー阪神」にも生産馬のジュンヴァルボンヌ号が出走するということで、とても楽しみな日になりました。

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同世代の生産馬は僅か5頭で、イッツクール号もジュンヴァルボンヌ号も初子でした。特にイッツクール号は生まれた翌日にもまだ哺乳が上手く出来ず、治療を施すなど手のかかる子でしたが、逞しく成長した姿をパドックで見ると、親バカかもしれませんが期待せずにはいられませんでした。

結果は2頭とも9着でしたが、とてもエキサイティングな競馬でした。

競走馬の生産業は、とてもリスクが大きい業種といっても過言ではありません。交配から妊娠・分娩・育成を経てようやく競馬場でデビューするだけでも大変な苦労の賜物です。ともすれば辛いことばかりが慮れる競走馬の生産です。しかし今回、G1競走という晴れの舞台に立ち会うことができ、生産に携わった者として多くの関係者と喜びを共有することも競走馬生産の一部なのだと実感しました。