ビートパルプの使い方
ビートパルプとは
ビートパルプは馬の飼料として近年広く認知されてきました。軽種馬飼養標準によると、ビートパルプの可消化エネルギー含量は2.85Mcal/kgであり、燕麦や配合飼料など一般的な濃厚飼料(約3Mcal/kg)とほぼ同等でありながら、繊維含量も高いため、濃厚飼料と粗飼料両方の特徴を兼ね揃えていると言えます。そのため、燕麦などの穀類の多給を避ける目的でオイルと並んで給餌されていますが、その利用法についてしばしば質問が寄せられますので、本稿ではビートパルプの特徴と利用法について改めて整理いたします。
ふやかす?ふやかさない?
ビートパルプは吸水性が高く、水を吸うと3倍以上に膨れるため(図1)、そのまま与えると食道内で膨張し、喉詰まりを起こす危険があると言われています。そのため水でふやかして十分に膨らましてから与えることが一般的です。一方で吸水させなくても良いという意見あり、これについては海外でもしばしば話題になるようです。筆者はビートパルプを原料に含む配合飼料で喉詰まりを繰り返す当歳馬を経験しており、ふやかすことを推奨する立場です。とは言え全ての馬が発症したわけではないので、ビートパルプそのものが危険というよりは、唾液量や食べ方(咀嚼回数や速度)なども大きく関与していると思われます。
図1 同量のビートパルプ(左は市販の乾燥状態、右は吸水3時間後の状態)
給餌量は?
ビートパルプの給餌量は必ず「乾物重量≒吸水前の重さ」で考えて下さい。しばしば、吸水後のカサをもって「うちはこんなに与えている」と考えている方がいますが、そのカサの半分以上は水ですので、当然栄養価はありません。
そして、「ビートパルプはどの程度与えるべきか」という疑問を持つ方も多いでしょう。牧場によって与えている量はさまざまですが、繁殖牝馬に1日2~3kg与えているところもあるようです。何kgがベストかということは各牧場の飼養状況によるので一概に言えませんが、例えば1日100~200g程度では「濃厚飼料を減らす」という本来の意味からすると大した効果はないと考えられます。
乾草採食量や食べ方への影響は?
前述の通り、ビートパルプは吸水して膨れるため、大量に与えると乾草採食量が減るのではないかという疑問が生じます。そこで当場において、放牧をせず乾草を食べ放題にした繁殖牝馬で検証実験を行いました。「燕麦2kg×2回」「ビートパルプ2kg×2回」「燕麦もビートパルプもなし」の3群の採食量を比較したところ、どの馬もビートパルプ4kgを完食し、また乾草を含めた乾物採食量は3群とも同程度でした(図2)。つまり、カサの多いビートパルプでも乾草採食量に影響はないと言えます。一方、採食時間には大きな違いが認められました。燕麦は4kgの採食に63分かかったのに対して、ビートパルプ4kgでは115分を要しました。一般的に飼い葉はゆっくり食べることが好ましいため、急いで食べてしまう馬に対してビートパルプを給与することは疝痛や胃潰瘍の予防として有効かもしれません。この点については検証していませんので、さらなる調査が必要です。
図2 飼料なし、燕麦4kg、ビートパルプ4kgを給餌した際の乾物採食量
日高育成牧場生産育成研究室 村瀬晴崇
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