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2026年1月22日 (木)

当歳馬におけるローソニア感染症の予防について

7月も終わりに近づき、日高地方でも暑い日が続いています。もちろん、本州以南よりも過ごしやすい気候なのですが、夏は暑さに加えてアブが増え、放牧中の馬達を悩ませています。アブを追い払うために尻尾を振りつづけて汗だくになり、体重を減らしてしまう馬もいます。このように、夏季の子馬たちのストレスを軽減することは生産牧場の課題だと感じています。ストレスがかかる生活が続くと、馬の体内でコルチゾールというホルモンの分泌が亢進し、免疫力が低下するため、様々な感染症にかかりやすくなります。本稿では、生産地で問題となる感染症の内の一つ、ローソニア感染症についてご紹介します。

ローソニア感染症は、Lawsonia Intracellularisという細菌が原因となる感染症です。当歳馬で多く発症し、1歳馬でも発症することがあります。特に寒さが増す冬や離乳直後など、子馬にストレスがかかりやすい季節に発症が多いと言われています。この細菌は小腸の細胞に寄生し、異常な細胞増殖を引き起こし、腸粘膜を肥厚させることでタンパク質などの栄養吸収が阻害されます。その結果として現れる主な症状は、下痢、元気消失、体重減少、低タンパク血症などがあり、重篤な症例では死んでしまうこともあります。

この感染症を予防するためには、できるだけストレスをかけない管理をすることはもちろんなのですが、ワクチン接種も行われています。豚用に認可されている生ワクチンが市販されており(写真①)、これを馬にも利用されています。現在、同ワクチンについては製薬会社と関係機関の協力のもと、馬用としての認可を取得できるよう調整が進められているところです。

投与方法は、豚では経口投与が推奨されていますが、馬では経直腸投与の方が効果が得られるようです。日高育成牧場の1歳馬を用いて過去に行った実験によると、経口投与群では10頭中1頭しかワクチンの効果を示す抗体価の上昇が見られなかったのに対し、経直腸投与群では10頭中8頭で明らかな抗体価の上昇が認められました。

写真②のように肛門からチューブを挿入し、一頭あたり30mlのワクチンを注入します。これを1か月間隔で2回行います。日高育成牧場では、例年8月下旬から9月上旬頃に離乳を行うので、その時期に抗体価を高く維持するため、7月上旬と8月上旬の2回投与を行っています。このワクチンを使用し始める以前は、日高育成牧場でも当歳馬や1歳馬での発症が認められましたが、使用以降は1例も発症しておらず、効果を実感しています。

疾病から身を守る免疫力が未熟な子馬にとって、感染すると重篤な症状を呈すことがあるローソニア感染症は、生産地で最も警戒するべき子馬の感染症の一つです。離乳や暑熱・寒冷ストレスなどにさらされざるを得ない子馬たちですが、立派な競走馬になるために逞しく育つよう、ワクチン接種をはじめとした疾病対策を万全にして管理していきましょう。

日高育成牧場 業務課 竹部直矢

Photo 写真①:市販されているローソニア生ワクチンであるベーリンガー・インゼルハイム社製「エンテリゾール®イリアイティス」

Photo_2 写真②:日高育成牧場では例年当歳の7月と8月にこのワクチンの経直腸接種を行います。