講習会 Feed

2021年8月30日 (月)

繁殖関連の最新研究(AAEP2020)の紹介

 AAEP(米国馬臨床獣医師協会)は世界中に9000人の会員を抱える団体で、毎年年末に大規模な学会を開催しています。昨年はCOVID-19のためオンラインでの開催となりましたが、現地開催と変わらず多くの臨床研究が発表されました。本稿では「最前線の研究紹介」ということで、身近な繁殖疾患に関する3演題を紹介いたします。普段の業務に直結する情報ではありませんが、世界の馬繁殖研究の一端を知っていただければ幸いです。

顆粒膜細胞腫の術後成績

 ケンタッキーで有名な馬病院ルードアンドリドルのスペイセック氏は「顆粒膜細胞腫72症例の術後成績」を発表しました。これほどの術後成績をまとめた報告は世界で初めてです。顆粒膜細胞腫はウマで最も一般的な卵巣腫瘍であり、ホルモン分泌異常により不妊となるため、治療のためには罹患卵巣を手術により摘出しなくてはなりません。症例の平均年齢は9歳、術後最初の排卵は174.5日後、最初の妊娠診断は302日後、分娩は739日後でした(図)。一般に、顆粒膜細胞腫は卵巣静止(無発情)となりますが、興味深いことに半数は正常な発情周期を保っている状態でした。また、過去の報告では術後6か月までに半数が発情回帰し、さらにその半分程度が妊娠に至っています。

PBIEに対するPRP療法

 イリノイ大学の研究チームは持続性交配誘発性子宮内膜炎PBIEに対するPRP (Platelet Rich Plasma、多血小板血漿)の有効性を報告しました。子宮内に射精された精液が子宮内膜炎を誘発することを交配誘発性子宮内膜炎といい、これ自体は正常な生理反応ですが、これが持続すると受胎率を低下させてしまう要因となります。PRPとは血液を遠心分離することで得られる血小板成分が濃縮された血漿で、さまざまな成長因子やサイトカイン、殺菌および抗炎症因子が含まれていることから治癒促進や疼痛軽減などを目的にヒト医療でもよく用いられています。PBIEに罹患しやすい牝馬に対してPRP(40ml)を子宮内投与したところ、子宮内貯留液の量、炎症(細胞診における白血球数)、細菌数、受胎率で対照群に比べて良い成績でした。PRP療法が繁殖領域においても有用であることを示す大変興味深いデータです。ただし、この実験プロトコールは交配の48,24時間前および6,24時間後の合計4回も投与しているため臨床現場で4回も行えるのか、PRPの精製にかかる手間と時間に見合う価値があるのか、一般的な子宮洗浄や薬液注入と比較してPRPがどれほど有効なのかといった点についてはさらなる検証が必要と思われます。

感染性胎盤炎の診断マーカー

 ケンタッキー大学のフェドルカ氏は感染性胎盤炎における診断マーカーとして炎症性サイトカインのインターロイキン(IL-6)が有用であることを発表しました。ケンタッキー大学は胎盤炎について精力的に研究しているグループです。この研究では実験感染させた妊娠馬において、羊水、尿水、母体血液中のIL-6濃度が対照群に比べて有意に高い値を示しました。IL-6はヒトの羊膜感染の診断マーカーとして用いられていますが、ヒトとは胎盤構造の異なるウマにおいても母体血中のIL-6測定が有用であるとは興味深いデータです。現在、ウマの妊娠異常を診断するツールとしてホルモン検査がありますが、これは胎子胎盤の異常を検出する指標であるのに対して、IL-6は感染に特異的である可能性が考えられ、子宮内というアプローチが難しい胎子に対する診断の一助となるかもしれません。

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図 罹患馬の情報および術後の経過

日高育成牧場 生産育成研究室 村瀬晴崇

2021年7月28日 (水)

後肢跛行診断と治療(膝関節領域)に関する講習会について

 2019年11月27日および28日、静内エクリプスホテルおよび日本軽種馬協会軽種馬生産技術総合研修センターにおいて、カタール国Eqine Veterinary Medical CenterのFlorent David氏とTatiana Vinaedell氏を講師に招き、馬の後肢跛行診断と膝関節領域の超音波検査に関する講習会が開催されました。今回はTatiana氏の後肢跛行に関する講習会の内容の一部をご紹介します。

後肢跛行について

・アプローチ

 馬の後肢跛行を診断するにはまずその馬の履歴を正確に把握する必要があります。履歴とは、年齢、品種、調教の状況、過去の跛行歴等を含みます。また馬を観察する際には厩舎のように馬が慣れている環境で行う必要があります。観察する際には、姿勢、筋肉の緊張、触診への反応、熱感や腫れがある部位はないか等をチェックします。歩様の評価は常歩、速歩、駆歩で実施しますが、特に速歩での評価が重要です。この際、引き手をフリーにして馬をコントロールしながらも自由に走らせることがポイントになります。

・後肢の跛行診断

 歩様検査は診断に不可欠ですがこの際は、跛行の有無だけでなく、患肢は一肢に限局されるのか複数なのか、また跛行の重症度等についてもチェックする必要があります。一般的に、後肢の跛行診断は前肢のそれよりも難しいとされています。また後肢の跛行は「ハミの後ろ側」「後肢の衝突」「後肢の弾み」といった漠然とした用語で表現されることがあるため、関節の曲がり、歩幅、前方への展出、骨盤の回転運動といった明らかな客観的指標を見つけることが正しい跛行診断の第一歩となります。

 以下に獣医師が後肢の跛行診断を行う2通りの方法を紹介します。

〇上下運動の評価:

 これは骨盤の背側正中に大きなボールや目印を設置し、その上下運動を一定時間観察する方法です(図1)。跛行している馬では、骨盤の患肢側における下向きの動きが小さくなる、あるいは患肢から離れる上向きの動きが小さくなるという2つの変化が確認されます。

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図1(骨盤背側正中にボールを設置、Tatiana氏のスライドより引用)

◯骨盤の回転運動の評価:これは、診断者が馬の真後ろに立ち、馬の歩行に伴う寛結節(矢印)の動きについて上下の振幅を左右で比較する方法です(図2)。

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図2(赤丸が寛結節)

おわりに

 本講習会には300人を超える牧場関係者や獣医師が詰めかけ、大きな関心を集めました。後肢跛行の原因は様々ですが、いずれの場合も早期発見と適切な治療が必要となります。本講演会の開催により参加者はこれまで以上に後肢跛行に対する高い意識を持つようになったのではないでしょうか。

JRA日高育成牧場 業務課 診療防疫係  長島 剛史

『第48回生産地における軽種馬の疾病に関するシンポジウム』について

 2020年10月15日(木)静内エクリプスホテルにおいて、JRA主催の「第48回生産地における軽種馬の疾病に関するシンポジウム」が開催されました。このシンポジウムは、生産地で問題となる疾病に関する最新の知見や、保健衛生管理に関する問題点や対応策に関する情報を共有するため、講師の先生方をお招きして毎年開催されています。例年は夏季に開催されていますが、本年は新型コロナウイルス感染症の流行のため、延期されたこの時期での開催となりました。本年の講演内容は「最近の米国の獣医療」、「微生物学」、「遺伝学」、「免疫学」、「外科学」と多岐にわたる分野に精通された講師の皆様に、大変貴重なご講演をしていただきました。本稿では、その中でも馬を飼養する上で問題となる感染症について興味深いご講演がありましたので、その概要をご紹介いたします。

ウマコロナウイルス感染症

 現在、ヒトの世界で新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るっていますが、ウマにもコロナウイルス感染症が存在します。本講演では、ウマコロナウイルス(ECoV)について研究をされている、競走馬総合研究所の根本学先生と上林義範先生よりお話しいただきました。

 ECoVはウマ固有のウイルスで、2000年に米国で感染馬が初めて確認されて以降、日本と米国で流行が報告されています。日本では2004年、2009年、2012年の3回、ばんえい帯広競馬場の重種馬群で流行が発生し、本年春に初めてサラブレッドを含む馬群での流行が確認されました。

 ECoVに感染した馬の主な症状は、発熱、食欲不振、元気消失、下痢などの消化器症状です。発症馬の多くは軽症で、数日のうちに回復しますが、米国では一部の発症馬で神経症状を呈し予後の悪い馬も確認されており(日本では確認されていません)、注意が必要な疾患であると言えます。ヒトのCOVID-19感染では主に肺炎などの呼吸器症状があらわれるのに対し、ECoVでは下痢などの消化器症状が主症状となり、過去の重種馬群での流行の際にも発症馬の1~3割で下痢が認められています。

 ECoVは糞便を介して伝染しますが、競走馬総合研究所が行った研究では9日間以上の長期間にわたって感染馬の糞便から大量のウイルスRNAが検出されることが確認されています。このウイルスを大量に含んだ糞便を、他の馬が経口摂取することにより感染が広がっていくと考えられています。また、ECoVに感染しても症状を示さなかった「不顕性感染馬」からも、症状を示した馬と同程度の量および期間のウイルス排出が確認されており、症状がない馬も感染源となってしまいます。

 診断には、COVID-19の検査でよく聞くPCR法という遺伝子検査法が用いられます。さらに競走馬総合研究所でさまざまな種類のPCR法を比較したところ、リアルタイムPCR法という検査法が最も検出感度が高いことも分かりました。

 一方、本年春のサラブレッドでの流行は、JRA施設内の41頭の馬群で起こりました。サラブレッド16頭とアンダルシアンやミニチュアホースなど様々な品種の馬で構成されていた馬群のうち15頭で症状がみられましたが、そのうち発熱は11頭、下痢は3頭でした。いずれも軽症で症状が現れてから1~3日で治まりましたが、注目すべき点はその感染力の強さでした。症状のない馬も含めて同一馬群の全頭に対して、ECoVに対する抗体を持っているかどうかを調べる中和試験を行った結果、全頭が抗体を持っていたことが分かり、馬群の全頭にECoVが感染していたことがわかりました。このことから、ECoVの感染力が非常に強力であることがうかがえます。

 さらにこの流行の調査から品種間のECoV感染率には差がなかったものの、糞便中へのウイルス排泄期間に差があることも明らかとなっています。サラブレッド感染馬では、糞便からウイルスが検出された期間が最長19日であったのに対し、非サラブレッド感染馬の5頭で19日以上ウイルスが検出され、最長で感染から98日間もウイルスを排出し続けました。このことは、品種によって感染源となるリスクの高さに違いがあることを表しています。

 今回のご講演では、ヒトで大変な問題となっているコロナウイルス感染症が、特徴や重篤度は違いますがウマでも起きているという興味深いお話をしていただけました。ご紹介したのはシンポジウムの演題のごく一部ですが、疾病の情報を知っておくことで、発生した際の適切な対応につなげられる可能性がありますので、常に最新の情報にアンテナを張ることが重要といえそうです。

 

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人馬の信頼関係の強化:駐立編 ~リトレーニングプログラムの応用~

はじめに

 今回は馬と人との距離感(パーソナルスペース:支配領域)を利用した『駐立』の調教についてお話します。

パーソナルスペースとは?

 人におけるパーソナルスペースとは、他人に近づかれる(侵入される)と不快に感じる空間のことで、『対人距離』、『パーソナルエリア』とも呼ばれます。馬は、自分が主張する『支配領域』である球状のパーソナルスペースを持つといわれています。馬の群れは、リーダーを頂点とする階層社会ですので、パーソナルスペースは順位付けに利用されます。集団放牧の際、不用意に近づいた馬を威嚇して追い払う『強い馬:群れでの階級が高い馬』や、『弱い馬』が『強い馬』の侵入を許容し、場合によってはスペースを譲る光景を見たことがある方も多いと思います。この習性を利用して、馬に『駐立』を教えます。

『駐立』の調教

 『駐立』に問題のある馬の多くは、必要以上に保持者(駐立させている人)に接近してじゃれたり、周囲の刺激を気にして落ち着かなかったり、動きまわります。前者は『リーダー』である人のパーソナルスペースに侵入することを、保持者が許容してしまうことが問題であり、後者は保持者にフォーカス(意識を向ける)せず、勝手に動いてしまうことが問題です。これらの問題を解決するために、以下2種類のグラウンドワークによる働きかけを活用します。

  1. 横方向の働きかけ

 適度の距離を置いて馬の正面に立ち、プレッシャーによって前肢を軸に後躯を回転させることを目的とします(図1)。最初に『リーダー』となるべき人(自分)と馬のパーソナルスペースをイメージします。次に、馬の斜め前方のパーソナルスペースに侵入し、腰角付近にプレッシャーを与えます。腰角に向けてリードを振り回す、あるいは長鞭を使って腰角を刺激します。初期は一歩でも動いたら、直ちにプレッシャーを解除し、停止したら馬を褒めます。プレッシャーに反応しない場合は、徐々にプレッシャーのフェーズ(強さ:段階)を上げ、馬が反応したら解除します。反対に、馬が人の要求以上に動き過ぎてしまう場合にはプレッシャーのフェーズを下げ、馬が反応した瞬間に解除します。馬が勝手に動くのではなく、人の指示に従って要求されただけ後躯を動かすことが大切です。なお、後躯を回転させた際に馬が前進して人のパーソナルスペースに侵入してしまう場合には注意が必要です。馬の前進に対して、人がスペースを譲って(後退して)しまったら、馬に主導権が渡ってしまいます。馬に人のパーソナルスペースを強く意識させる必要があります。

  1. 前後方向の働きかけ

 正面からのプレッシャーコントロールによって馬を前後方向に動かすことを目的とします。最初は馬の正面に立ち、頭部や胸前にプレッシャーを与えて後退させます(図2)。後退を促すプレッシャーとしては、リードを振り回すことや、目線などのボディーランゲージを使用します。なお、反応しない馬には無口が動くほどリードを揺らしたり、余ったリードを鼻先に触れさせたりすることによって段階的にフェーズをコントロールします。後退したらプレッシャーを解除し、停止したら褒めます。次に、人が後退しながら馬から離れ馬を呼びます(図3)。最初は軽くリードで引っ張る、あるいは人が前かがみになって伏し目がちになることで馬は前進しやすくなります。人のパーソナルスペースに侵入しない位置で馬を停止させて褒めます。停止の際に馬を褒める行為によって、馬に考える時間を与えることができます。考えて理解する時間を与えれば、調教はよりスムーズに進むと思います。

 『駐立』できない馬の問題は、この二つの働きかけで改善できると思います。馬の動くスピードと方向は、人がコントロールしなければなりません。馬が勝手に動いて(スピード有り)も、止まって(スピード無し)も『駐立』はできません。人が明確な目的を持って分かり易く働きかけることで、馬は人にフォーカスします。馬と適切な距離を保ち、動いてしまう馬にはプレッシャーを上手に使って人が馬を動かし、プレッシャー解除によって馬に自ら停止することを選択させられれば、自然と『駐立』できるようになると思います。

図1 横方向の働きかけ

馬の腰角にプレッシャーを与えて後躯を動かします。

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図2 前後方向の働きかけ①

頭部や胸前にプレッシャーを与えて後退させます。

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図3 前後方向の働きかけ②

馬が前進しやすい態勢で馬を呼び込みます。

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JRA馬事公苑 診療所長 宮田健二

2021年2月 1日 (月)

BTC育成調教技術者養成研修について

はじめに

公益財団法人 軽種馬育成調教センター (以下BTC)は、牧場に就労するために必要な知識と実践的な技術を備えた育成調教技術者の養成を目的に、育成調教技術者養成研修(以下BTC研修)を実施しております。平成4年の開講から500名以上の修了生が牧場へ就労し、軽種馬産業界を支える人材として活躍しています。今回はこのBTC研修について詳しくご紹介いたします。

 

前半の騎乗訓練と厩舎作業

BTC研修の前半は、敷地内の教育エリアで教育用馬を用いた基礎訓練に専念します。基礎訓練では、騎乗訓練と並行して正しい馬の触り方、引き馬、馬体の手入れなど馬の取扱いや、厩舎作業といった牧場に就労する上で欠かせない基本的な内容を学びます。

騎乗訓練は、騎乗経験別のグループに分け、個々の騎乗レベルに応じた訓練を行います。開講から2~3ヵ月間は、教育エリアの小さな角馬場で基本馬術、前傾姿勢等(写真1)を中心とした訓練を行います。その後、走路騎乗でのスピードコントロールに必要な競走姿勢を学び、駈歩で歩度の詰め伸ばしが自由にできるようになると、いよいよ走路騎乗へと進みます。

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写真1 覆馬場で前傾姿勢を学ぶ

BTC研修の最大の特徴は、騎乗訓練中に教官が併走騎乗(写真2)で研修生を指導することです。こうすることで、研修生に騎乗姿勢の見本を示すことができる、その場で的確な指導が行える、リードホースの役割を担える等の利点があるほか、安全面からも突発的な事象に迅速に対応することができます。

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写真2 グラス坂路馬場での教官(左)が併走した騎乗訓練

 

 後半の騎乗訓練と厩舎作業

研修後半は、JRA日高育成牧場の全面協力のもと、実際の育成馬である「JRA育成馬」を用いて「若馬の取扱い」、「若馬が競走馬になるための基礎トレーニング(馴致実習)」、「実践的な騎乗」等を学びます。また、これらに並行して教育用馬での騎乗訓練もレベルアップしていきます。BTC調教場の広大な施設をフル活用した訓練を行うほか、若馬への騎乗準備として、騎乗バランスを習得するための障害飛越訓練を行います。こうした訓練を積み重ね、12月からはJRA育成馬騎乗実習(写真3)を迎えます。この研修では、実際に育成調教中のJRA育成馬に騎乗し、ブリーズアップセールまでの実践的な騎乗訓練を行います。

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写真3 JRAブリーズアップセールに向けたJRA育成馬騎乗実習

 

学科・実技&課外研修

また学科では、教官、BTC獣医師のほか、外部講師を招いて、馬に関する基本的な知識から専門的な知識までを幅広く学習します。学科の多くは、1時限目の座学で受けた講習内容について2時限目に実習を行い、3時限目の試験で学習状況を確認します。実技講習では、バンテージの巻き方からセリ市場での馬の展示方法等、日常の取扱いに必要な技術はもちろん、草刈り機実習、厩舎内外の維持管理、用具の取扱い等、環境整備や牧場管理の重要性についても学びます。

課外研修では、種馬場、民間牧場、セリ市場および競馬場(写真4)などの軽種馬関連施設の見学だけでなく、 レクリエーション的に楽しめる研修や、防災訓練、普通救命講習といった研修も行います。このほか、BTCの研修だからこそ実現できる課外研修を数多く実施しています。

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写真4 JRA札幌競馬場開催見学

 

おわりに

  BTCでは、ホースマンとしての技術はもちろん、社会性や協調性についても養えるような研修の実施に取り組んでおります。また、今後の研修がより良いものとなるよう、修了生や研修生の就労先へのアンケート調査を行い、結果やご意見を次回の研修内容にフィードバックするよう努めています。今後とも皆様からのご協力をお願いいたします。

 

🏇育成調教技術者養成研修 体験入学会 & 第38期生募集のお知らせ🏇

〇BTC研修体験入学会を令和元年7月26日(金)・8月27日(火)に北海道・浦河で開催します。

   ※8月の体験会はBOKUJOB事務局で受付を行います。

〇令和2年4月からの研修生(第38期生)を募集しています。応募条件は以下のとおりです。

・研修修了後、必ず軽種馬の生産・育成に3年以上携わることのできる者       

・入講時、中学校卒業以上の学歴を有する者

・厩舎作業および騎乗訓練を行うのに支障がない者   

※乗馬経験は問いません。   

第38期生受講願書等の受付は「9月6日(金)必着」です。

 

<お問い合わせ>  詳しくは下記にお問い合わせいただくかHP(「BTC 研修」で検索)をご覧ください。

教育課 教育係 TEL 0146-28-1001  9:00~17:00(土日祝休)

メールでのお問い合わせは kyoiku@b-t-c.or.jpまでお願いします。

 

軽種馬育成調教センター 業務部 教育課 小守智志

2021年1月27日 (水)

コンフォメーション~馬の見方のヒント~ 「馬のサイズ」

コンフォメーション

コンフォメーション(conformation)という単語は、直訳すると「構造」、馬について言えば「馬体の構造」ということになります。大雑把かつ乱暴な物言いになるかもしれませんが、「コンフォメーションが良い馬は故障が少なく、効率的に走ることができる」と言えます。例えば下肢部のコンフォメーションに関して例をあげると、起繋たちつなぎ(横から見た時の地面との角度が大きい繋)の馬は下肢部の衝撃緩和能が低いために球節炎などの発症リスクが高まり、反対に臥繋ねつなぎ(地面との角度が小さい繋)のものは、特に繋が長い場合で屈腱や靭帯に関連する疾患発症リスクが高まると教科書に記載されています。

 

コンフォメーションの科学的根拠

しかし、実際に馬を取り扱っていると、上記のような「下肢部のコンフォメーション異常=疾患発症リスクが高い」との考え方を実感できる時がある一方で、コンフォメーションに問題があるにもかかわらず、何事もなく競走馬を続けている馬に遭遇することも少なくありません。

実は、このようなコンフォメーションに関連する教科書的な記載の中には、科学的な根拠がないまま経験則のみで記載されているものも散見されます。古くは紀元前の哲学者クセノフォンが著書の中でコンフォメーションの見方について言及しており、若干の違いはあるかもしれませんが、長きに亘って古今東西のホースマンが同じ考え方で馬を見ているとも言えます。

もちろん2,000年以上の時を経ても廃れずに受け継がれた経験則を否定するわけではありませんが、科学的な根拠も併せて参考にすることで、より客観的に馬を見ることができ、評価精度の向上が見込めるようになるかもしれません。

 

馬は大きい方が良いか?

では、具体的な話をしていきましょう。コンフォメーションと言うと、体型バランスや下肢部などの各パーツごとの構造が注目されがちですが、より単純な論点である「馬のサイズ」、すなわち馬体の大きさについてはどのように考えればよいのでしょうか?

前々回(2019年3月1日発行)の当欄「強い馬づくり最前線~競走馬の体重に影響をおよぼす潜在的な要因」では、競走馬は馬体が大きいほど競走成績も良いことが統計的に明らかとなり、その理由を大きい馬ほど相対的に軽い荷物(斤量)を背負って走るためではないかと推察しています。この結論からすると、競走馬を購入する側も生産育成する側も馬体は大きければ大きいほど良しと考え、前者はなるべく大きな馬を選択する、後者は馬をなるべく大きく育てるような飼養管理を目指すことになります。しかし、一方で若馬への過剰な栄養供給が成長期における骨疾患リスクを高めるという指摘もあり、必ずしも馬体を大きく育てることが良いこととは言えなさそうです。もちろん、馬体の大きさには母馬の産次や出産年齢、遺伝などの要因も複雑に関与するため、単に「食べさせる」だけで馬体の大きさをコントロールすることは困難であることは言うまでもありませんが。

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馬は大きい方が良いのか?

 

大きい馬のリスク

では、競走成績が良いとされる「大きい馬」にはリスクはないのでしょうか?

過去にJRA競走馬総合研究所で行われた調査では、出走時の馬体重が重い馬は、軽い馬に比較して浅屈腱炎の発症リスクが高いことが確認されています。発症馬の馬体重が重かった理由として、いわゆる「太目の馬体」で出走したことも要因の1つであったかもしれませんが、馬体そのものが大きい大型馬であったことも否定できません。

また、昨年アイルランドの研究者から発表された研究によると、喉頭片麻痺(いわゆる喉なりの原因となる疾病)のリスクファクターとして性別、体高、年齢、体重、頸の長さと太さ、顎の幅などとの関連性を調べたところ、体高が喉頭片麻痺と関連する主要因であったという興味深い結果が報告されています。

このような科学的根拠に基づいて考えると、大きい馬は小さい馬に比較して競走成績が良い傾向にある一方で、浅屈腱炎や喉頭片麻痺の発症リスクが高いとも言えそうです。読者の皆さんの中には、既に経験則で同様の傾向を感じている方もおられるかもしれませんね。

 

馬の体高の推定法

最後に馬の体高を目視で推定する方法についてご紹介します。馬の体高は、正式には体高測定器を用いて地面からき甲までの高さを測りますが、測定器がない場合には自身の体で代替することができます。例えば身長178cmの筆者の場合、予め首のつけ根が150cm、顎が160cm、目が170cmと知っておくことで、対象とする馬のおおよその体高を測定することができます。しかし、あくまで推定値しか測定できませんので、セリ上場のために測定する場合には必ず測定器を用いてください。

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体高を目視で推定する方法。自身の体の部位を測定器で代替する。

JRA日高育成牧場 業務課 冨成 雅尚 

新生子馬の疾病に関する講習会について

2018年11月28日・29日、静内エクリプスホテルにおいて、カリフォルニア大学デイビス校のJohn Madigan博士を講師に招き、出産時における子馬の一般的な疾患に対する予防と迅速な治療のための管理法に関する講習会が開催されました。本稿では、その中のトピックとして近年注目されている新生子適応障害症候群(NMS)についてご紹介いたします。

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John Madigan博士(カリフォルニア大学デイビス校)

新生子適応障害症候群(NMS)について

NMSとは、出生直後の子馬が呈する一連の異常行動の総称であり、代表的な症状として“母馬を認識できない”、“乳房の位置を把握できない”、“目的もなく彷徨う”などが挙げられ、これまで「ダミーフォール」などと呼ばれてきました。発症のメカニズムは不明な点が多いものの、帝王切開、難産、早期胎盤離脱(レッドバッグ)、胎子期の成熟異常あるいは子宮内感染などによって、脳が低酸素状態になることが原因だと考えられてきましたが、根本的な治療方法は存在せず、まず確実に初乳を給与することに加えて、起立補助、酸素の吸入、ボトルを用いた人工授乳、輸液などの対症療法のみが実施されています。

一方Madigan博士は、発症メカニズムとして“胎子期に分泌されているホルモン(抑制ホルモン)”が関与しているのではないかという極めて興味深い説を提唱しています。

 

胎子期のホルモンが発症に関与?

Madigan博士らの研究によると、NMSの子馬から“胎子期に分泌されているホルモン(抑制ホルモン)”が高い濃度で検出されていることがわかりました。このホルモンは直接脳に作用し、新生子を子宮内にいた頃の睡眠状態に戻す効果があるようです。

本来は出生時における産道での胸部圧迫(軽度の低酸素状態)が引き金となり、出生後に分泌が低下します。しかし、一部の子馬では胸郭圧迫による刺激が少ないことなどが原因で分泌の低下が起こらないようです。

この場合、子馬は生まれているにもかかわらず母馬の子宮内にいる時のようにあまり動かず、呼吸やお腹の動きも最小限に抑制されることに加え、母馬を認識できず、乳房の位置も把握できない状態に陥ります。

つまりこれがNMSの発症メカニズムではないかというのが、Madigan博士の仮説です。

 

ロープスクイーズ法とは?

Madigan博士らはこのホルモン分泌異常に対して、ロープスクイーズ法(胸部圧迫)という新しい処置法を提唱しています(写真1)。

この方法は、新生子馬の胸部をロープで圧迫することにより、産道の通過を再現する方法で、抑制ホルモンの分泌低下を目的に実施されます。胸部圧迫により、子馬は再び眠った状態になり、呼吸数、心拍数の減少や外部刺激への反応の低下などが認められます。20分間の圧迫後にロープを外すと子馬の運動性は活発になり、反応の良い馬ではたった1度の処置で正常な行動を示すようになるとのことです。また、1度で正常に戻らない場合でも4時間おきに1日4回まで実施することができ、治るまで数日間継続して実施することができます。

本法の治癒率は、従来の対症療法と変わらず約90%ですが、1時間以内の治癒率が37%(従来:4%)、24時間以内の治癒率が69%(従来:35%)と回復までの時間短縮が見込めるようです。ただし、ロープスクイーズ法を実施する際には子馬の全身状態や肋骨の骨折の有無を確認する必要があるので注意が必要です。

本法の実施方法は以下のURLにてご確認いただけますが、もしNMSの子馬に対して本法を行う場合には、獣医師とご相談の上実施することをおすすめします。

 

http://vetmed.ucdavis.edu/compneuro/local_resources/pdfs/mfsm_instructions.pdf

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写真1:ロープスクイーズ法

 日高育成牧場業務課 福田一平

2021年1月25日 (月)

ファームコンサルタント養成研修

「コンサルタント」と聞いて皆さんが最初に思い浮かべるのは、いわゆる「企業コンサルタント」ではないでしょうか。その業務内容は多岐に亘るようですが、一般的にはクライアント企業の経営的な課題を抽出し、それを改善するための助言を与えて業績を向上させる職業というイメージをお持ちかと思います。

本稿で紹介する「ファームコンサルタント」は、「クライアント企業=軽種馬の生産もしくは育成牧場」であり、主に馬の栄養管理に関する課題の抽出およびそれらを改善するためにアドバイスをする「馬の栄養管理技術者」を指しています。

 

ファームコンサルタントの役割

馬の栄養管理技術者であるファームコンサルタントは、その名から想像できるように、個々の馬に対する給餌を中心とした飼養管理に関するアドバイスの提供が主な役割になります。そのためには、馬の栄養学や草地学はもちろんのこと、外科学や繁殖学など馬の栄養状態と関連する幅広い分野に造詣が深いことが求められます。

具体的には、与えている飼料の種類や量、放牧時間、繁殖成績や疾病発症などの課題をクライアントから直接聞き取ったうえで、BCS(ボディコンディションスコア)や馬体重の測定、栄養が関連する子馬のDOD(成長期外科的疾患)の有無などを確認することで個々の馬の栄養状態を把握するとともに、放牧地の状態なども観察します。これらによって牧場全体を俯瞰的かつ客観的に評価したうえで、クライアントと相談しながら課題の解決に導いていきます。

 

ファームコンサルタント養成研修(栄養管理技術指導者養成研修)

JBBA日本軽種馬協会はファームコンサルタントの更なる普及を目的として、平成27年から「ファームコンサルタント養成研修(栄養管理技術指導者養成研修)」を立ち上げました。2年間に亘ってJRA日高育成牧場で行われた「第1期ファームコンサルタント養成研修」では、総合農協、軽種馬農協、飼料会社等の職員が参加しました。

毎月1回、計24回行われた本研修は「実技・講義・ディスカッション」の3本柱で構成されており、実技では「BCSの測定や疾病の有無の確認を目的とした子馬や繁殖牝馬の馬体検査」、講義では「栄養学、各ステージの馬の飼養管理、草地学など幅広い知識の付与」、ディスカッションでは「毎回参加者に与えられた英語の論文要約や馬体検査レポート作成などの提出課題について参加者全員での意見交換」が行われました。第1期ファームコンサルタント研修では9名が修了し、修了者はそれぞれの立場から研修での「学び」を活かして個々の業務に役立てているようです。

本年9月からは、新たなメンバーによる第2期ファームコンサルタント養成研修が開始されており、前回の参加団体・企業に加えて、牧場関係者も参加者に名を連ねています。このように様々な立場から軽種馬生産育成に携わるホースマンが、2年間の長期間に及ぶ研修を通して栄養管理技術者としての能力を身に着けることで、馬産地全体における飼養管理技術の底上げに繋がるのではないかと感じています。

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日高育成牧場業務課長 冨成雅尚

米国のブレーキング

今回は米国における1歳馬のブレーキングについて紹介します。わが国では主にヨーロッパ式のダブルレーンによるドライビングを取り入れている育成牧場が多いですが、米国ではいきなり騎乗する方法が行われていました。

 

ウインスターファームのブレーキング部門

かつて生産牧場だった土地を改修して作られました。二つの厩舎、ウォーキングマシン、角馬場のほか、パドックが25面、広い放牧地が3面あり、牡は0.5~1ヘクタールのパドックに2頭ずつ放牧され、めすは8ヘクタールの広い放牧地に8頭で放牧されていました。馬はほぼ24時間放牧され、騎乗時のみ集牧されていました。飼い付けもパドックで行われ、朝夕牧場オリジナルのスイートフィードを2kg給餌されていました。

 

ブレーキングの手順

1週目は全て馬房内で行われていました。まずは引き馬で馬房内回転を教えて、それからローラーを装着し胸部の圧迫に慣れさせて、初日からまたがります。その後、鞍を載せ、最後にハミ付きの頭絡を装着していました。

2~4週目はラウンドペン(円馬場)および角馬場で騎乗していました。馬装は無口頭絡の上からハミ付きの頭絡を装着し、落馬防止のためネックストラップを付けていました。まず引き綱(リード)のまま小さい円でランジングを行っており(図1)、この際馬場の壁は利用せず馬が内方を中心に自分でバランスを取って周回できることを意識していました。騎乗後は輪乗りおよび8の字乗りを繰り返し、口向きを作っていました。速歩だけでなく駈歩も行っていました。

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図1.引き綱(リード)のまま小さい円でランジング

 

5~6週目には普段放牧されている放牧地(パドック)で騎乗していました(図2)。輪乗りおよび8の字乗りを繰り返すこと、速歩および駈歩をすることは一緒です。この時期に不整地をあえて走らせることで、馬が足下に注意するようになり、故障しにくい走行フォームを身に付けさせるという考え方でした。この時期の1歳馬は人を乗せてバランスを取るだけで精一杯という感じですが、さらにバランスの取りにくい不整地を走らせることでより強い体幹の筋肉を養成していきます。

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図2.普段放牧されている放牧地(パドック)で騎乗

 

7~14週目には三つのコースで騎乗されていました。一つ目は大放牧地コースで広い放牧地を右回りで速歩および駈歩で周回します。全長3.7kmで、雨天時は芝が滑るので使われていませんでした。

二つ目はグラス坂路コースです(図3)。これは放牧地と隣の牧場との間の勾配のある草地を利用して、まず上り、下り、上り、下りと交互になるように使っていました。全長は2.9kmで、坂路の傾斜は4~6%でした。このコースも雨の日は芝が滑るので使われていませんでした。

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図3.グラス坂路コースでの調教

 

三つ目は周回コースおよび坂路コースです。ブレーキング部門の隣にあるトレーニング部門まで下りて行き、1周1,400mのオールウェザーの周回コースを左回りで走った後、ファイバーサンドの坂路コースを上ります。全長5.1kmで坂路の傾斜は3%でした。雨が降っても馬場が悪化しないので使われていました。そして、12月もしくは1月にこのコースを難なくこなせるようになってから、ブレーキング部門を卒業しトレーニング部門に移動していました。

 

まずは走行フォームを作る

ブレーキング後、まずはセルフキャリッジした走行フォームを徹底的に教え込んでいました。方法として、芝の上などの不整地で2ヶ月程度乗り込むことで馬が足下に注意するようになり、体幹の筋肉が鍛えられ、自然と起きた走行フォームを身に付けていきました。ヒトも子供の頃の方が早く自転車や一輪車の運転を覚えるように、走路に出て時計をつめていく前に理想的な走行フォームを身に付けさせるのが時期的に適していると考えられていました。さらに芝の上の不整地で乗る際には物見をしないように工夫されていました。例えば普段放牧されていてすでに環境に慣れているパドックで騎乗する、またグラス坂路に行く時には誘導馬として経験豊富でおとなしいリードポニーと一緒に行くなど、若馬が物見をして集中力を欠くことがないように配慮されていました。

JRA日高育成牧場 業務課 診療防疫係長 遠藤祥郎

サラブレッド市場におけるレポジトリー

はじめに

サラブレッドの生産において、セリは重要なイベントです。生産者(販売者)は、交配から分娩・初期・中期育成と約2年半もの歳月を掛けて育ててきた馬を売却し、ようやく利益を得ることができるのです。一方、購買者にとっても、セリは良質な馬を納得できる価格で手に入れることができる貴重な機会となります。しかし、過去には落札後に何らかの欠陥に気づき、購買者が販売者に不服を唱えることもありました。落札馬をキャンセルしたりされたりすることは、販売者にとっても購買者にとっても、さらには市場の主催者にとっても不利益になることばかりです。

一方で欧米のサラブレッド市場では、以前から上場馬を事前に確認する獣医検査が頻繁に行われていました。この情報をより多くの人が共有できる方法としてレポジトリーが考案され発展してきたのです。今回は、このレポジトリーについて触れてみたいと思います。

 

レポジトリーとは

レポジトリーとは、本来、英語で「収納場所」や「倉庫」という意味の言葉になります。サラブレッド市場におけるレポジトリーは、セリの主催者が開設した市場内の情報開示室やインターネット上のオンラインレポジトリーにおいて、上場馬の四肢X線検査画像と上気道内視鏡検査動画を購買者に向けて販売申込者が任意で公開するシステムのことです。

北海道市場の業務規定では、落札馬に①関節部の骨片、②関節面の軟骨下骨嚢胞、③喉頭片麻痺、④頸椎狭窄による腰痿がある場合、当該市場終了の翌日より3日以内に「売買契約の解除」を申し出ることができることになっています。但し、すでにレポジトリー資料にこれらの所見が認められている場合には、「売買契約の解除」の届け出をすることができない仕組みとなっています。

そのためレポジトリーは、販売申込者の瑕疵担保責任(外部から容易に発見できない欠陥に対して責任を負うこと)を免れることができる資料になるとともに、購買者の重要な購買判断材料の一つとなっているのです。

 

四肢X線検査画像

現在、国内のサラブレッド1歳市場におけるレポジトリーの四肢X線検査画像の提出部位は、球節、手根関節、飛節と後膝で、合計22~36枚となっています(後膝はセレクトセールでは屈曲位が無いため1枚少ない)(図1)。

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育成期の若馬の関節部には、様々な成長期に特有な疾患(発育期整形外科的疾患:DOD)の発生が見られます。その病態は、骨の成長点である骨端版や関節面で骨組織を造成している軟骨組織にダメージが加わることで生じる骨軟骨病変です。主な病変には、離断性骨軟骨症や軟骨下骨嚢胞などで(図2)、関節内の力の加わる部位に認められる疾患です。殆どの所見は、競走期に影響を及ぼすことが無いことが分かっていますが、その程度によっては跛行を発症する可能性もある疾患となります。

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上気道内視鏡動画

馬は鼻からしか呼吸ができない動物です。空気の通り道である鼻道や上気道部の異常は肺におけるガス交換を阻害するため、運動能力に直結する問題となる注意が必要な所見です。レポジトリーに提出される上気道内視鏡動画は、馬を静