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2024年12月 9日 (月)

装蹄師の養成について その3

過去2回に渡って、装蹄師の養成についてお話してきましたが、今回はその最終回、

装蹄教育センターの数ある外部研修の中で最も研修期間の長い、北海道研修についてご紹介したいと思います。まずは前回までのお話、装蹄師になるにはどうしたら良いか?について振り返ってみましょう。

装蹄師になるためには、装蹄師の養成施設、公益社団法人 日本装削蹄協会 装蹄教育センター(※1)にて1年間、専門的な知識と技術を学び、装蹄師認定試験2級認定試験(※2)に合格して、装蹄師の資格を取得する必要があります。装蹄教育センターは、栃木県宇都宮市にあり、設立されてから30年、延べ448名の認定装蹄師を現場に輩出することになります。装蹄教育センター卒業後の就労先は、競走馬のトレーニングセンター・競馬場・乗馬クラブ・北海道などの生産地で装蹄師として働くこととなります。

では今回のお話に移ります。この北海道研修は毎年7月に行われます。4月に入講して3ヵ月、基本的なことを理解し始めた時期ですね。まずは本年の北海道実習の行程をご紹介いたしましょう。研修は空路にて、羽田空港から帯広に飛び立つところから始まります。

以下、本年度の研修行程です。

 

7月14日(日)研修場所/帯広競馬場

        【午後】施設見学・輓馬装蹄の見学および体験・ばんえい競馬観戦

15日(月)研修場所/ヒダカファーム・大北牧場

        日高地区の個人牧場での装削蹄見学と削蹄実習

16日(火)研修場所/JRA日高育成牧場・BTC

 JRA日高育成牧場・BTC施設見学・講義・削蹄実習

17日(水)研修場所/北海道市場・橋本ファーム・那須野ファーム・JBBA

        北海道市場セリ場見学・講話

        新冠地区の牧場での装削蹄見学と削蹄実習

18日(木)研修場所/株式会社ノースヒルズ・社台スタリオンステーション

        社台ホースクリニック

        【午前】株式会社ノースヒルズ業務見学・講話

        【午後】社台スタリオンステーション種馬見学・講話

            社台ホースクリニック施設見学・講義

19日(金)研修場所/ノーザンファーム・追分ファーム

        【午前】ノーザンファーム装蹄実演見学・講話・削蹄実習

        【午後】追分ファーム削蹄実演見学・削蹄実習

 

  20日(土)新千歳空港にて解散

この研修の目的は、北海道でしか学ぶことの出来ないことを学ぶことにあります。

生産地での装蹄師は、当歳馬の肢軸矯正、繁殖牝馬の削蹄、育成馬の装削蹄と、特に知識と技術が必要となります。肢の曲がってしまった状態で生まれた馬は、早い時期での矯正が必要です。繁殖牝馬も肢元に問題があると、元気に放牧地を走り回ることができません。すると一緒にいる子馬も行動範囲が狭くなりますので、筋力の低下など親子共々、様々な問題が発生します。調教の進んできた育成馬は蹄が摩滅し、蹄鉄の装着が必要となります。この北海道研修では、実際に日高地区の経験豊かな開業装蹄師さんに同行し、馬の扱いから肢上げや保定、削蹄方法を学びます。普段扱っている装蹄教育センターの大人しい馬とは違う馬を扱う事に目的があるのです。ですから北海道研修でのメインの実習、削蹄実習はここでしか出来ない、貴重な実習となっているのです。削蹄実習で実技を学んだあとには、各施設や牧場にて、再び貴重なお話や講義を受けます。この北海道研修が終わるころには、講習生が知識と経験によって、精神的に一回り大きくなっていくのを感じることができます。

北海道研修が終了すると、講習生は約一ヶ月の夏休みとなります。

この夏休み期間をどう過ごすかは講習生次第です。生産地での就職を希望する者は、研修後引き続き北海道に残ります。トレセンの開業装蹄師に弟子入りが決まった者は、親方を訪ねます。まだ就職の決まっていない者は、求人表を元に就職活動に励みます。講習生の夏休みの過ごし方は人それぞれです。

夏休み明け、講習生の目つきは変わります。残りの講習生生活、しっかりと装蹄師としてのスタートラインに着くべき準備をします。技術に頂点はありません。日々精進し、馬関係者から信頼され、頼られる装蹄師に育ってほしいものです。3回に渡って、装蹄師の養成についてお話させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?これまでのお話で、装蹄師の仕事に興味を持っていただけたら幸いです。最後に今回お世話になりました各所関係者様、開業装蹄師の皆様へ、この場をお借りしましてお礼申し上げます。装蹄師の卵達のために、これからもご協力のほど、どうぞよろしくお願い致します。

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1727713395797 JRA日高育成牧場での削蹄実習風景

 

1727713378513 本年度の講習生30期生

 

(※1)装蹄教育センターが設立される以前は、東京世田谷の駒場学園高等学校装蹄畜産科 

     装蹄コース(3年間)、長期講習会(6ヶ月)、短期講習会(2週間)などがありました。

(※2)2級認定資格を取得後4年以上経過したら1級資格の試験を、さらに1級取得後9年以上経過したら指導級の試験を、それぞれ受験できます。その昇格試験に合格すると上級の資格に昇給します。

 

 

 

 

 

以下のQRコードにアクセスしてみてください。昨年グリーンチャンネルで放映されたホースアカデミー「装蹄師の養成について」と題して、装蹄師の仕事、またその必要性、装蹄師教育の歴史、装蹄師認定講習会について、女子アナウンサーとの対談形式で、詳しくご紹介しております。ぜひご覧ください。

ホースアカデミー「装蹄師の養成について」→

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                      JRA日高育成牧場   竹田 和正