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2020年1月 3日 (金)

繁殖牝馬と子馬の蹄管理

No.130(2015年8月15日号)

はじめに
 繁殖牝馬や子馬は放牧地で管理される時間が長く、仲間とともに良質な青草を探して歩き回るため、子馬は肢蹄が健全であれば運動量が増えて基礎体力が向上します。しかし、下肢部、特に蹄に疾患があり歩行を嫌う場合には、運動量が減少して健全な馬体の成長が妨げられてしまいます。そのため、日頃から蹄を注意深く観察し、触れることにより、蹄病の発症を早期に発見し、悪化を防止することが重要です。そこで今回は繁殖牝馬と子馬の蹄管理のうち、日常心がけるべき基本について紹介したいと思います。

日常の管理
 蹄に汚物や糞尿(アンモニア、酸やアルカリ)、泥土が詰まった不潔な状態で放置すると、蹄質が悪化し、蹄叉腐爛などの蹄病の発症誘因となり、跛行の原因となることがあります。常に清潔な状態に保つためには、こまめな裏堀りが重要です(図1)。裏掘りの際には、蹄壁に触れることにより蹄の異常サインである帯熱を感知できます。また、子馬には蹄を軽く叩いて音を出し、衝撃を与えることでその後に実施する装削蹄の馴致となります。

1_4 図1 裏堀り

蹄油の利用
 冬季は蹄が乾燥して硬くなることにより、蹄機作用(体重負荷による蹄の変形によって着地時の衝撃を緩和したり蹄内部の血液循環を助ける生理作用)が妨げられ、蹄踵の狭窄や裂蹄などが発症しやすくなります。また、手入れに湯を使用すると必要以上に蹄の水分を蒸発させることから、蹄洗後は直ちに蹄油を塗布して乾燥を防止する必要があります。逆に夏季は、蹄の過度な湿潤により蹄質が軟化し、蹄叉腐爛や蹄壁欠損を発症しやすくなります。蹄油は、過剰な蹄の水分発散(乾燥)や湿潤を防止することを目的として蹄壁や蹄底に塗布します。その他、成長基点である蹄冠に、蹄クリームや単軟膏などを刷り込むことも蹄を保護するうえで有効です。

定期的な削蹄
 子馬の蹄は柔らかく成長が早いため、異常摩滅などにより、蹄形が変形してしまうと歩様、肢勢、蹄形に大きな影響を与えます。そのため、定期的な装削蹄が不可欠です。子馬も繁殖牝馬と同様に、3~4 週間隔で装削蹄を実施しますが、状態によっては時期を早める場合もあります。日頃から蹄を注意深く観察し、不正摩滅や蹄形異常の早期発見に努めることが重要です。日高育成牧場では出生時から離乳まで、装蹄師および獣医師が毎日、肢勢および歩様をチェックしています。また、過度の摩滅や蹄壁欠損が生じた場合は、成長期の軟らかい角質への負担を軽減させるため、充填剤の使用や蹄の生長を阻害しないためにポリウレタン製蹄鉄(図2)を用いて保護します。

2_4 図2 ポリウレタン製蹄鉄

牧場でもできる蹄管理
 蹄の縁が尖っていると蹄壁欠損や裂蹄を起こしやすくなります。そのため、端蹄廻し(はづめまわし)を実施し蹄壁欠損などを予防します。端蹄廻しとは、蹄壁の厚さ2 分の1 を目安として、ヤスリで外縁を削り、蹄壁に対して45度の丸みをつけます(図3)。軽度の蹄壁欠損を発見した時は、欠損部の拡大を防ぐために、蹄用のヤスリを常備して欠損部のヤスリがけを行いましょう。

3_4 図3 端蹄廻し

最後に
 健全な馬を育てるには装蹄師による定期的な装削蹄だけでは限度があり、牧場での日常の蹄管理が必要不可欠です。また、蹄の異常など発見した場合は速やかに担当の獣医師または装蹄師に相談しましょう。

(日高育成牧場 業務課 山口 智史)

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