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2019年5月27日 (月)

日高育成牧場からのメッセージ

No.78 (2013年5月15日号)

来場者を魅了するセリ市場に

 3月1日付けの定期人事異動で日高育成牧場の場長として、4年ぶりに日高に戻って来ました。今後ともどうぞよろしくお願いします。
 低迷していた日本経済は、自民党の安部政権が掲げるアベノミクス効果により、円安や株価上昇など少しずつですが回復の兆しが見えて来ました。一方、JRAブリーズアップセールはプライベートセールではありますが、年度初めの育成馬セールであり、当該年のセリ市場の動向を占うセールとして注目されています。
 本年度の成績は売却率こそ100%を達成しましたが、売却総額は6億7千万円(対前年比93%)、平均価格は880万円(対前年比93%)、来場購買者数は166名(対前年比95%)と、景気回復を肌で実感できるという結果までには至りませんでした。
 また、JRAはブリーズアップセールを新規馬主(登録後3年までを新規馬主と定義)の入門編のセールと位置付けており、新規馬主の来場者数は48名、実際に購買された者は24名で購買頭数は26頭といずれも過去最高を記録しました。新規馬主の方が本セールで購買を経験することや調教師との接点をもつことで、次のステップとして民間のセリ市場に参加してくれることを期待しています。
さて、セリ市場の成績の中で、購買登録者数は皆さんにとって馴染みが少ないのではないでしょうか。

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 図は、北海道市場主催の1歳市場の過去5年間における購買登録者数の推移です。特にサマーセールとオータムセールで顕著ですが、購買登録者数は3市場とも増加しており、市場主催者による振興策の成果といえます。セリ市場の振興で最も重要なことは、複数の方が上場馬にビッドするよう、一人でも多くのお客様を市場に誘導することです。そのためには購買したくなる資質の高い馬を上場すること、来場しやすい市場日程や開催場所および楽しめる雰囲気を目指した運営などがあげられます。JRAでは現在改築中の札幌競馬場のスタンド内でセリを開催できるよう工事を進めており、完成後はぜひ活用していただきたいと思います。このようにセリ市場の振興に向けて、市場主催者や上場者を始めとして競馬サークル全体で取組んでいければと考えています。


日高育成牧場 
場長 山野辺啓

『JRAホームブレッドの役割』

 3月1日付けで日高育成牧場の副場長を拝命しました横田貞夫です。栗東トレーニングセンター 競走馬診療所長から異動して参りました。東西のトレーニングセンター競走馬診療所やJRA本部馬事部の防疫課・獣医課での勤務経験はあるものの、生産現場での勤務は初めてとなりますので、生産地の皆様よろしくお願いいたします。
 さて、第9回目となりましたJRAブリーズアップセールも先日、無事に終了いたしました。関係各所の皆様方にはこの場をお借りして御礼申しあげます。私自身、今までも何度かブリーズアップセールは見てきましたが、今年は上場馬を送り出す日高育成牧場の立場から見ることとなりました。
 今年上場されたJRAホームブレッド8頭については、他の育成馬たちと同じ目で見守ってきましたが、日高育成牧場に着任してから続々と誕生してくるJRAホームブレッド達を見ていると、2年後のJRAブリーズアップセールにJRAホームブレッドが上場されるときには生産地の皆様方と同じ気持ちで送りだすことになるものと考えています。
 日高育成牧場で生産したホームブレッドは、一昨年の第7回よりブリーズアップセールに上場していますが、サラブレッドを生産する過程で、生産地で問題となっている不受胎や早期胚死滅、流産などの経済的損耗の高い疾病について、交配に関わる要因の調査、妊娠に関わる馬臨床繁殖学および生殖内分泌学の研究を実施し、その対応策について検討しています。
 また、生産地において初期育成段階に発現する発育期整形外科疾患(DOD)は、育成の様々な段階で問題となっていますが、DOD発生の実態を探るため、JRAホームブレッドが生れてから離乳に至るまでの肢勢調査を継続的に行い、実態の把握、病態改善のための管理方法について、周辺の獣医師団体と協力して調査しており、これら調査研究で得られた成果については、学術集会、生産地におけるシンポジウムや講習会での報告などを通じて、生産育成現場への還元、普及に努めています。
 現役競走馬を管理するトレーニングセンターにおいても、生産地で話題となっているOCD(離断性骨軟骨症)をはじめとするDODの評価について相談を受けることが多々あり、臨床症状と併せ診て判断をしているところですが、ホームブレッドを用いた生産からの調査研究の成果は競走馬における診断の一助にもなるものと考えております。
 今後もホームブレッドを含めた育成馬を用いて生産育成に関する研究を多角的に行い、生産育成技術の開発の成果を広く広めていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

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 今年のJRAホームブレッド第1号は、3月11日に誕生したビューティコマンダの13(牡:父ヨハネスブルグ)でした。出生時の体重は64kgで、骨量豊富なしっかりした子馬です。本年は8頭の産駒誕生を予定していますが、2年後の「2015JRAブリーズアップセール」に、誕生した8頭すべてが無事に上場できることを願っています。

日高育成牧場  
副場長 横田貞夫

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