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2019年11月15日 (金)

育成馬のウォーミングアップとウォーキングマシンの活用

No.112(2014年11月1日号)

 育成馬の調教に運動器疾患はつきものですが、これらを少しでも減らし、効果的な調教を行うためにウォーミングアップは大切です。ウォーミングアップには「体温を上げる」、「関節や筋肉の柔軟性を高める」、「心肺機能の準備をする」、「集中力を高める」、「コンディションを把握する」などの効果があります。一方で、必要以上のウォーミングアップを行うことは疲労の蓄積につながります。また精神的なフレッシュさが失われ、調教の十分な効果が得られません。ウォーミングアップには引き運動、調馬索運動、騎乗運動などさまざまな方法がありますが、JRA日高育成牧場ではウォーキングマシンを活用したウォーミングアップを実施しています。今回は当場で実施しているウォーミングアップについて紹介します。

ウォーミングアップ
 当場では、最初にウォーキングマシンで約20分間の常歩、そして騎乗しての速歩を角馬場(約40m×70m)で両手前2周ずつ行っています。ウォーキングマシンを用いて、ヴァイタルウォークを行うことで、体温を上げ、柔軟性を高め、心肺機能の準備をしています。角馬場では、速歩を実施することで若馬の緊張を緩和し、また、両手前の運動を実施することで若馬の左右均等な筋肉の発育を促します。また、監督者が馬体のコンディションを把握するだけでなく、獣医職員による歩様チェックを常に行うことで、重篤な運動器疾患の発症を未然に防止するようにしています(写真1)。
 また、調教が進んで坂路調教を行う際には、上記に加え800mトラックでF22秒程度のキャンターを1.5週程度行います。若馬にとって坂路調教は肉体的に負荷の大きいトレーニングですが、ウォーミングアップのキャンターを行うことによって、本調教時の乳酸上昇を抑え、筋肉のダメージを抑えることが可能となります。

1_5 写真1 角馬場運動での獣医職員による歩様チェック
 
ウォーキングマシンの活用
 ウォーキングマシンはウォーミングアップだけでなく、クーリングダウン、リハビリテーションなどさまざまな利用方法があります。労働力を節約でき、スピードと時間の調整により、規定運動を負荷できることがメリットです。一方、単調な運動になるため馬が飽きやすい、馬を強制的に動かす機械であるためアクシデントにより怪我をするといったデメリットがあります。アクシデントによる怪我を防ぐため、ウォーキングマシンの利用にも馴致が必要です。マシン内の環境に慣らすために、数日間は引き馬でマシン内を歩き、初めて馬を単独で歩かせる際には、引き馬で1周回ってから放します。マシン内で立ち止まってしまうような馬は経験馬と一緒に実施することも有効です。慣れないうちはアクシデントが起こることが多いため、必ず監視下で実施します(写真2)。これらの馴致を行っても過度に敏感な馬についてはさらに時間をかけて慣らします。
 運動時間は利用の目的により異なりますが、ウォーミングアップ、クーリングダウンでは15~30分程度が目安です。また、1~2歳馬であれば速度は時速5.5km~6.5km程度であり、日により手前を変えて実施します。

2_4 写真2 ウォーキングマシンに慣れるまでは監視下で実施

最後に
 今回はウォーミングアップとウォーキングマシンの活用の1例として、当場で実施している方法を紹介させていただきましたが、皆様が普段利用されている調教施設とは異なると思います。それぞれの調教施設に適した方法を考える際の参考にしていただければよいと考えています。適切なウォーミングアップにより、育成馬の運動器疾患を予防し、効果的に調教を進めましょう。

(日高育成牧場 業務課 大塚 健史)

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