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2020年5月28日 (木)

装蹄師の養成について

No.159(2016年11月15日号)

             

 

『装蹄師になるためには、いったいどうしたらよいのでしょうか?』

 日本で唯一、装蹄師の養成教育を行っている装蹄教育センターで、昨年まで技術指導を担当させていただいていた私、竹田和正がこの疑問にお答えします。

 結論から申しますと、公益社団法人 日本装削蹄協会が約1年間にわたり全寮制で行っている装蹄師認定講習会で専門的な学科と実技を学んだ後、装蹄師認定試験(2級認定試験)に合格して、装蹄師の資格(※1)を取得することでスタートラインに立つことになります。そのためには、まずは募集定員16名という狭き門を突破し、この認定講習会に入講する必要があるのです。

 装蹄師認定講習会が行われる装蹄教育センターは、栃木県宇都宮市にあり、設立されてから22年の間で、延べ316名の認定装蹄師を現場に輩出しています。(※2)装蹄師の「学校」と聞くと、馬の取り扱いや乗馬の経験がないとだめなのかと思うかもしれませんが、全くそのようなことはありません。認定講習会の中で、馬との接し方や騎乗、装蹄師になるために不可欠な解剖学や運動学などの学科、1本の鉄の棒から蹄鉄を作る鍛冶技術、そして、実際に馬の蹄を削ったり、蹄鉄を装着したりする装蹄技術を学ぶことができるのです。また、様々な分野の専門講師による特別講義、馬産地北海道での研修、競馬場やトレセンの見学などもカリキュラムの中に組み込まれているので、とても内容の濃い講習会となっております。

 センター卒業後は、JRA、トレーニングセンターや全国の競馬場、乗馬クラブ、生産地などで装蹄師として働くことになります。その求人は全国から装蹄教育センターに集まっており、現在、修了者の就職率は100%です! しかし昔から、「1人前の装蹄師として信頼されるまでには最低でも10年は必要だ!」と言われているように、この装蹄師認定講習会を修了し、資格を取得してもすぐにプロとして仕事の依頼をされるのは皆無と言えます。まずは見識豊かな先輩装蹄師の下で働きながら経験を積み、応用技術を蓄積する必要がありますが、その大切な基礎となる部分は装蹄教育センタースタッフが、熱意を持って指導するので十分に作ることが出来るでしょう。

 装蹄師の仕事は決して楽ではありません。しかし馬の足元を支える重要な仕事なので、とてもやりがいがあります。どうでしょう? ほんの少しでも興味が沸いたら、すぐに日本装削蹄協会のホームページ(http://sosakutei.jrao.ne.jp)を検索してみてください。そこには、歴代の講習生の1年間の講習会の様子や寮での生活などがわかる講習生のブログのコーナーもあるので、ぜひ覗いてみてください!!

 また、教育センターでは、装蹄や造鉄が体験できるオープンキャンパスやフットケアセミナーなども行われておりますし、実際に講習生の実習を見学することや現役装蹄師のお話を聞くことも可能です。最初に狭き門といいましたが、近年は、受験者数が減少傾向にあるので、まさに今が装蹄師になるチャンスといえます。

 さあ!!あとはあなた次第です。ぜひこの技術を身につけ、一緒に馬サークルを盛り上げて行こうではありませんか? 同じ装蹄師として仲間が増えるのを楽しみにしています。1_6

 

(※1)2級認定資格を取得後4年以上経過したら1級資格の試験を、さらに1級取得後9年以上経過したら指導級の試験を、それぞれ受験できます。その昇格試験に合格すると上級の資格に昇給します。

 

(※2)装蹄教育センターが設立される以前は、東京世田谷の駒場学園高等学校装蹄畜産科装蹄コース(3年間)、長期講習会(6ヶ月)、短期講習会(2週間)などがありました。

 

 

                      (JRA日高育成牧場・専門役 竹田 和正)

 

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