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2021年1月27日 (水)

繁殖牝馬の蹄管理について

繁殖牝馬の蹄管理の必要性

競走馬や乗馬などの騎乗運動を行う馬は、跣蹄(せんてい、蹄鉄を装着しない状態)のままでは、蹄が摩滅し、その度合いが強くなると、蹄内の知覚部(神経や血管のある部位)まで達することで、痛みにより跛行を呈します。そのため、蹄鉄を装着して蹄の摩滅を防止する必要があります。一方、野生馬は、騎乗されることはありませんが、自発的な運動による蹄の摩滅量と伸びる量のバランスが釣り合っているため、削蹄も蹄鉄装着も必要ないと考えられます。

それでは、騎乗運動をしない一方で、比較的長い時間に亘って放牧されている繁殖牝馬についてはどうでしょうか?騎乗運動をしないため、基本的には摩滅量よりも伸びる量のほうが多くなることから、蹄鉄は一部の馬を除いて装着する必要性はありませんが、少なくとも伸びた蹄を削らなくてはなりません。

また、競走馬や育成馬よりも体重が重いため、蹄はその負重に耐えられず、凹湾、すなわち蹄壁が反るように変形し易い傾向にあり(※写真1)、重度の場合には裂蹄を伴う馬も見受けられます(※写真2)。さらに放牧管理中心のため地面の状態に蹄質が左右されます。たとえば泥濘(ぬかるみ)に長時間晒されることで蹄の角質が脆弱化し、白線裂等の蹄病を引き起こすこともあります。騎乗運動をしなくても、蹄病により痛みを生じた場合には、ストレスによる受胎率の低下が懸念されることに加えて、哺乳期の場合には子馬の運動量にも影響を及ぼします。以上のことから、飼養管理者は常に繁殖牝馬の蹄の状態を確認するとともに、理想は1ヶ月間隔、長くても2ヶ月間隔での定期的な削蹄が推奨されます。

1_3 ※写真1  凹湾した蹄。 

横方向に広がっている。

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※写真2    重度の裂蹄

 

繁殖牝馬の蹄管理の方法

まず、日常の蹄管理として最も重要なことは、繁殖牝馬の肢蹄をしっかり観察することです。集放牧時の歩様や放牧中の様子など、毎日観察することが異常の早期発見に繋がります。また、こまめに裏掘りを行うことで、蹄の変化を感じることができますが、そのためには、健康な蹄の状態(※写真3.4)を理解しておく必要があります。そして何より重要なのは、定期的な削蹄です。先にも述べましたが、1ヶ月間隔の削蹄が理想であり、裏掘りや目視だけでは発見できない疾病の発見にも繋がります。

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※写真3  健康な蹄(蹄壁)

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※写真4  健康な蹄(蹄底)

削蹄は、装蹄師が蹄の縦や横のバランスを考えて形状を整えながら、伸びた部分を切ったり削ったりします。そして仕上げに端蹄廻し(はずめまわし)(写真5)を行います。これは蹄が欠けたり(蹄壁欠損)、割れたり(裂蹄)するのを防ぐことが目的で、蹄壁の角を削る処置をします。また、繁殖牝馬の跣蹄に多い蟻洞、白線裂、裂蹄や蹄壁欠損にも適切に対応しなければなりません。これらは、症状が軽いうちに処置を行えば、大事に至らずに済みますが、発見が遅れると完治するまでに時間がかかってしまうばかりか、重篤化した場合には完治することも困難となります。「蹄なくして馬なし」です。まずは飼養管理者が、蹄の健康状態をしっかり把握し、装蹄師、獣医師とコミュニケーションを図り、三者で連携を取っていくことが、健康な繁殖牝馬をつくり、そして健康な子馬を生むことに繋がっていくことでしょう。

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写真5  端蹄廻し

 

日高育成牧場 専門役 竹田和正

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