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2021年1月25日 (月)

喉頭部超音波検査について

今回は「喉頭片麻痺」(いわゆる「のどなり」や「喘鳴症」を起こす病気の一つ)の診断方法の一つとして注目されつつある喉頭部の超音波検査(エコー検査)についてお話します。喉頭片麻痺は息を吸う時に気管の入り口が狭くなることで、異常呼吸音やプアパフォーマンスを引き起こす病気です。近年、この分野の研究が進められていく中で、症例馬の喉の筋肉に変化が起こっていることが明らかになりました。このことから、超音波検査でこれらの筋肉の状態を確認し、傷害の程度を詳細に把握することで、診断手法の一つとしてだけでなく、喉頭片麻痺の早期診断や予後判定に用いることができないかと、盛んに研究が行われています。

 

喉頭部超音波検査の方法

それでは、喉頭部超音波検査について具体的に話を進めていきたいと思います。実際に観察するのは、主に外側輪状被裂筋(CAL)と背側輪状被裂筋(CAD)と呼ばれる二つの筋肉(図1)で、異常がある場合には断面積の減少や色合いの変化(輝度の増加、白っぽく見える)が認められます(図2および3)。

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図1.喉頭部の解剖(左:正面、右:横)

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図2.CAL縦断面:喉頭片麻痺症例はCALの輝度が高い(色が白い)。

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図3.CAD横断面:喉頭片麻痺症例のCADは薄く、輝度が高い。

 

これまでは実際に手で触わることで、これらの筋肉の萎縮の程度を確認していましたが、エコー画像として描出することで、より高精度に検査を行えるようになりました。このように、喉頭部超音波検査は喉頭片麻痺を診断する上で有用なツールの一つになる可能性を有していますが、単独ではパフォーマンスへの影響の有無を判断することはできないため、安静時および運動時内視鏡、さらに騎乗時の呼吸音やパフォーマンスなどを併せた総合的な診断が必要になります。また、現時点で研究途上の分野でもあり、超音波所見と呼吸器異常との関連性には明らかになっていないことが沢山あります。日高・宮崎の両育成牧場では育成馬全頭に対して検査を行い、喉頭部超音波と内視鏡のデータを併せて蓄積していくことで、競走能力に影響を及ぼす呼吸器病態を解明し、より早く、正確な診断を行えるよう研究を進めています。

日高育成牧場 業務課 胡田悠作

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