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2021年2月 1日 (月)

サラブレッドのハミ受け(前編)

公益財団法人 軽種馬育成調教センター(BTC)では関連団体と協力し、強い馬づくりの一環として全国各地の生産・育成地区で育成技術講演会を実施しています。今回は、過去に浦河で行われた講演会の内容から、育成馬に騎乗される方々にとって最も身近な問題である「サラブレッドのハミ受け」(前編)についてご紹介いたします。

 

サラブレッドの調教とは何かを考える

サラブレッド競走馬や育成馬の騎乗者は、ハミ受け、バランス感覚およびペース判断などの習得、さらにそれらの技術向上が必要とされます。しかし、調教に対して無関心であれば馬に対して悪い影響を与えるだけでなく、自身の騎乗フォームをも悪化させることになります。したがって、騎乗者は向上心を忘れず、自分自身をチェックしながら日々の調教に取り組むことが大切です。

どのような調教にも明確な目的があるはずですが、騎乗者がこの目的を理解していなければ、いくら調教を行っても競馬で馬の能力を十分に発揮することはできません。正しい騎乗姿勢で馬体の筋肉を鍛錬すること、馬との信頼関係を確立して馬の精神力を強化することといった目的をしっかり意識して調教に臨むことが重要です。

また、馬の走行姿勢が悪ければ速く走ることができないのは当然ですが、そればかりか頚、背中や後躯の負担を増大させて馬体を痛めてしまう結果にもつながります。これでは必要な筋肉の鍛錬ができないばかりか馬の能力までも低下させてしまい、競馬で馬の全ての能力を引き出すことは到底できません。

一方、騎乗者が扶助によって馬に働きかけて正しい走行姿勢を理解させることができれば、馬と騎乗者の信頼関係が確立され、能力向上にもつながります。このように扶助を通じて正しく理解させるべき項目の一つにハミ受けがありますが、競馬で馬の能力を十分に発揮させるためには、この正しいハミ受けが重要とされます。正しいハミ受けは自由な馬のコントロールだけではなく、正しい姿勢を作って能力を最大限に発揮することにも不可欠なことなのです。

 

ハミ受け

ハミ受けでは、馬が丸くなる形が理想形となります。馬が丸いといっても太っているわけではなく、頚から背中、さらに腰へとつながるトップライン(馬体を横から見た時)が丸みを帯びている姿勢のことを指します(図1・2)。実は、強引にハミを引きつけて頚を曲げても、馬の後躯を積極的に動かして前方に推進力を送っても、外見上だけなら馬を丸くすることができます。しかし、正しいハミ受けに必要な丸い姿勢は、前者ではなく後躯を積極的に動かしてハミ方向に馬を押し出して作る姿勢なのです。ハミ受けの最終目標は、上から見た時に馬体が真っ直ぐの状態でハミ受けをしていることですが、最初のきっかけ作りとして、上から見た時に馬体が弧を描いた状態で扶助を与えると、正しい姿勢を理解させやすくなります。具体的な進め方として、初めは直径10mの小さな円に沿って馬体が弧を描いた状態から開始し、30m、50mと徐々に円を広げます。円が広がるのに伴って描く弧も直線に近づきますが、この際に徐々に馬体が真っ直ぐに近い状態でハミ受けできることをイメージすると良いでしょう。正しいハミ受け姿勢により馬の力を蓄積させることが可能となり、競馬の最後の直線での爆発的な力の解放につながります。(後編に続く)

 

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図1 正しいハミ受け

トップラインの丸さは後躯の進出を容易にします。

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図2 悪いハミ受け

頚の反転は後躯の進出を拒みます。

 

 

 

公益財団法人 軽種馬育成調教センター 業務部 次長 中込 治

 

 

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