米国のトレーニングセール
以前ご紹介した米国の混合セリ(Mix Sale)に続き、今回は2歳トレーニングセール(2YO in Training Sale)についてご紹介します。
実際に馬場で人が乗って走らせる調教供覧を行う2歳トレーニングセールは、日本のJRAブリーズアップセール、千葉サラブレッドセール、HBAトレーニングセールに該当します。米国では若馬の育成は温暖なフロリダ州が中心であるため、トレーニングセールも同地で開催されています(表)。米国の2歳トレーニングセールの頂点といえば、ハランデールビーチにあるガルフストリームパーク競馬場で開催されるファシグティプトン社のガルフストリームセールですが、育成の中心地オカラで開催されるOBSのセリも上場頭数が多く、人気を集めています。過去には、カリフォルニア州デルマーにあるデルマー競馬場で開催されていたバレッツ社のマーチセールも有名でしたが、2017年を最後に開催されなくなりました。一方、馬産地ケンタッキー州レキシントンにあるキーンランド競馬場で開催されていたキーンランド協会主催のエイプリルセールは、昨年5年ぶりに復活したことも話題を集めました。
時期 |
主催者 |
名前 |
場所 |
上場頭数(2019年) |
3月 |
ファシグティプトン社 |
ガルフストリームセール |
ハランデールビーチ |
188 |
3月 |
OBS |
マーチセール |
オカラ |
577 |
4月 |
OBS |
スプリングセール |
オカラ |
1,221 |
表.米国の主な2歳トレーニングセール
上場頭数にもよりますが、米国のトレーニングセールは①調教供覧、②下見、③セリがそれぞれ別の日に開催され、3日以上かけて開催されるのが普通です。
またJRAブリーズアップセールと同様に調教供覧は単走で行われており(写真)、3コーナーまでは誘導馬(リードポニー)が併走しますが、4コーナーで単走となって一気に加速し、ホームストレッチで全力疾走時の走行フォームが評価されます。自動計測されたラスト1ハロンの走行タイムが即座にターフビジョンに表示されるのですが、仕上がりが早い馬は2ハロンのタイムを計測して公表しています。また、セリ会場(競馬場で開催するだけでなく専用のトラックを有するセリ会場もあります)によって馬場が異なることも米国トレーニングセールの特徴ですが、ガルフストリームセールでは芝かダートのどちらを走行するかがが選択可能、OBSのセールではオールウェザー馬場を走行します。
レポジトリーに関しては、基本的には1歳セリと同様ですが、ファシグティプトン社が主催のセリでは全頭調教供覧後にレントゲン撮影を行い、公開しています。セリを3日間かけて開催しているからこそ実現可能なサービスだと言えます。
余談ですが、2歳の競走馬を日本へ輸入する際は、まず動物検疫所での入国検疫が10日間、その後繋養先の育成牧場での着地検疫が3ヶ月必要となり、さらに競馬に出走するためにトレセンでの在厩期間が15日間必要であるため、日本に到着してから競馬できるまでに少なくとも4ヶ月もの期間が必要となります。米国のトレーニングセールは6月頃まで開催されていますが、日本人バイヤーが3月や4月に開催される早期のセリに集中しているのは、この競馬デビューまでに必要な検疫期間が関係しています。
写真.調教供覧は単走で行われる(ガルフストリームセール)
今回を持って3回にわたって連載してきました米国のセリ紹介は終了です。ご愛読いただきありがとうございました。
日高育成牧場 専門役 遠藤祥郎
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