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2019年1月21日 (月)

BTCと軽種馬育成調教場-BTC20周年によせて-

No.34 (2011年6月15日号)

 日高育成牧場の敷地内にある軽種馬育成調教場(以下、調教場)の管理運営を行っている軽種馬育成調教センター(BTC)は、本年20周年を向かえました。この間BTCは、さまざまな観点から「強い馬づくり」を支援する事業を展開し発展してきました。今回は、調教場の概要とBTCの事業について紹介いたします。

多種多様な馬場とその特性
 バラエティに富んだ調教が行えるよう多種多様な馬場(表1)をそろえ、調教場を利用する育成者の創意工夫によりさまざまな調教を施すことが可能となっています。いずれの馬場も、定期的な硬度調査を実施し適切な管理によって硬度維持に努めるとともに、砂厚調整や整地転圧などの日常管理を入念に行っています。また、開場以来の利用頭数は年々増加傾向にあり(図1)、今では日高東部地区の競走馬の育成場として大きな地位を築くまでにいたっています。

表11_6

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図1 開場以来、調教場の利用頭数は年々増加している

育成調教技術者養成研修事業
 強い馬を育成するには、確かな技術を持った騎乗技術者が不可欠です。このためBTCでは、こうした騎乗技術者を養成するための研修事業も行っています。研修期間は4月からの1年間、全国各地から性別、乗馬経験を問わず30歳未満の人を募集、選抜し、浦河の日高事業所において全寮制で行っています。研修生は、馬への近づき方、引き方などの基本動作の教育からはじめ、やがて厩舎作業や馬取扱い全般にかかわることを学びます。また、馬という動物についての知識を学ぶ学科は、馬体の各名称などから病気の知識などの衛生管理、牧草や繁殖についての基礎知識にまでいたります。馬の騎乗に関しては一般的な基本馬術からはじめますが、走路騎乗が始まると、教官が併走しながら指示を与える方法で騎乗技術を指導しています(写真1)。また、研修の後半ではJRA育成馬のブレーキングや初期調教なども経験し、研修修了前にはハロン15秒程度のスピード調教が出来る騎乗技術を習得します。現在は女子3名を含む29期生21名が研修中ですが、育成牧場に就職してから即戦力として活躍することはもちろん、やがては生産地の牧場等で技術的中核として働く人材となることを期待しています。

3_2写真1 研修生の騎乗訓練

軽種馬の競走能力の向上等に関する調査研究
 BTCでは「強い馬づくり」の一環として、軽種馬診療所において「運動科学に関する調査研究」および「育成期のトレーニング障害に関する調査」等を中心に調査研究を行っています。「運動科学に関する調査研究」では、育成馬のトレーニングを科学的に管理するため、人のスポーツ医学を応用したトレーニングの効果判定やトレーニングによる馬体の生理機能の変化について調査を実施してきました。たとえば、馬の走行中の心拍数や運動後の血中乳酸値を調査することで馬の運動能力がどのように向上していくかを明らかにし、さらに様々な馬場(グラスvsウッドチップvs砂、平坦vs坂路)が馬に与える負担度を明らかにし、育成者の皆さんがトレーニングメニューを作成する上での参考にしていただいています。また、「育成期のトレーニング障害に関する調査」では、調教場利用馬の診療及び各種検査から、トレーニングに伴う疾病の発生状況や異常所見が将来の競走成績にどのような影響を与えるかについて調査を実施しています。その結果、育成馬に発生する骨疾患の多くは、筋腱付着部(腱や靭帯が骨と付着している部位)の障害が因子となって発生していること、さらに近年はトレーニング強度の増加により、四肢の骨折や屈腱炎が増加傾向にあること、などを報告しています。

牧草と草地土壌分析事業
 生産牧場等に対して良質な牧草生産の促進と飼養管理技術の指導や普及に役立てるため、牧草や草地土壌の成分分析を実施し、その結果をフィードバックする事業も行っています(写真2)。近年、昼夜放牧を実施する牧場も増加していることから、放牧地の改良や採食量が増加する牧草の栄養価を把握し飼料給与方法に反映させる必要性が増しています。こうした馬づくりの基本を点検するうえで、土壌や牧草の成分を定期的なチェックは欠くことができません。

4写真2
 
 今後ともBTCのさまざまな事業をご理解いただき活用いただければ幸いです。

(日高育成牧場 総務課  長澤 れんり)
(BTC日高事業所 次長  早川 聡)

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