« 馬の感染症と消毒について | メイン | 運動機能の発達様式(1):呼吸循環機能と有酸素運動能力の発達 »

2019年2月 8日 (金)

OCDって何?

No.40 (2011年9月15日号)

 OCD(※1)とは、発育の過程で関節軟骨に壊死が起こり、骨軟骨片が剥離した状態です。クラブフットやボーンシストなどと同じくDOD(Developmental Orthopedic Disease:発育期整形外科的疾患)の一種です。若馬でしばしば跛行の原因となり、関節鏡を用いた骨軟骨片の摘出手術が必要となることがあります。


OCDの病態は下記の3つの段階に分類できます。
1)レントゲンで所見があるが、臨床症状はない
2)腫脹や跛行など臨床症状があるが、レントゲンでそれに見合う所見がない(関節鏡を入れれば所見がある)
3)腫脹や跛行など臨床症状があり、かつレントゲンでそれに見合う所見がある
 

 JRA育成馬を用いた調査成績から、「上記1に該当する場合は手術の必要はない、3に該当する場合は関節鏡を用いた摘出手術を実施する必要がある」と考えています。2に該当する場合が最も判断が難しい状態で、診断麻酔といって局所麻酔薬を跛行の原因と考えられる関節に注射し跛行が消失したら関節鏡を入れてみて、病変が確認されればその場で手術に移行するという方法もあるようです。ヒアルロン酸ナトリウム(商品名ハイオネート)や多硫酸グリコサミノグリカン(商品名アデクァン)の関節内あるいは全身投与など内科的治療で改善する場合もあります。

飛節に多く認められる
 OCDは飛節、球節、膝関節(いわゆる後膝)、肩関節などに発生しますが、最も一般的に見られるのは飛節のOCDです。飛節の中でも脛骨中間稜(写真1)が最も多く77%(244/318)、続いて距骨外側滑車(写真2)が12%(37/318)、脛骨の内側顆が4%(12/318)、距骨内側滑車が1%(3/318)、他の複数の組み合わせが6%(22/318)であったとの報告もあります。最も良く認められる症状は関節液の増量(いわゆる飛節軟腫)ですが、跛行を呈することはまれです。また、近年ではせり前のレポジトリーのレントゲン検査で偶然見つかることが多いようです。また、関節鏡手術後の予後が非常に良いため、跛行せず関節液の増量が認められるのみの症例でも関節鏡手術が実施されることが多いようです。JRAでは現在、飛節OCDが認められた育成馬について、手術適用を含めて追跡調査を行っています。結果がわかり次第報告させていただきます。

1_2 写真1.脛骨中間稜のOCD(○印)

2_2 写真2.距骨外側滑車のOCD(○印)

球節にも発症する
 球節のOCDは、第3中手骨(後肢であれば中足骨)遠位背側、第1指骨の近位掌側(後肢であれば蹠側)辺縁および第1指骨近位背側に発生します。臨床症状は、球節の腫脹(関節液の増量)で跛行が認められない場合もあります。第3中手骨(後肢であれば中足骨)遠位背側のOCDは病変により下記の3つに分類されており、Ⅱ型およびⅢ型は関節鏡手術の適応とされています(写真3・4・5)。


 Ⅰ型:欠損や扁平化がレントゲンのみで認められる
 Ⅱ型:欠損に骨片を伴う
 Ⅲ型:骨片や遊離物(ないこともある)を伴う1つあるいはそれ以上の欠損や扁平化がある

 JRA育成馬を用いた調査成績から、後肢の場合は腫脹や跛行などの臨床症状がなければ、多くが手術の必要なく競走馬として能力を発揮することが可能と考えています。

3_2 写真3.第3中手骨遠位背側のOCD(Ⅰ型)

4 写真4.第3中手骨遠位背側のOCD(Ⅱ型)

5 写真5.第3中手骨遠位背側のOCD(Ⅲ型)

その他の部位のOCD
 膝関節(いわゆる後膝)のOCDは、大腿骨外側滑車稜(写真6)に最も多く発生し64%(161/252)、他に大腿骨内側滑車稜7%(17/252)、膝蓋骨1%(3/252)、他の複数の組み合わせが28%(71/252)であったという報告があります。臨床症状は、他の関節のOCDと同様跛行あるいは関節液の増量で、ほとんどの症例では保存的療法(60日間の馬房内またはパドック休養)で治癒するとされますが、レントゲン上で欠損の長さが2cm以上または深さが5mm以上の病変が確認される場合は関節鏡手術が推奨されています。

6 写真6.大腿骨外側滑車稜のOCD

 肩関節のOCDは、上腕骨や肩甲骨関節窩に発生します。周囲の筋肉が厚く、レントゲン検査には多くの線量が必要で2歳以上の馬ではポータブル撮影装置では撮影できない場合もあります。一般的にレポジトリーで撮影される関節ではないため、跛行している馬を検査した場合に発見されます。保存的療法では予後が良くないとされていますが、関節鏡手術は手技が難しいので、部位によっては手術が困難です。

 以上、OCDについて説明してきましたが、生産牧場のみなさんにとっては、「レポジトリー検査を受けた際に偶然見つかる」というのが最も多いパターンではないでしょうか。前述したように、「レントゲンで所見があるが、臨床症状はない」というものであれば手術する必要はないと考えるのが一般的な見方ですので、必要以上に心配することはありません。ただし、市場で高く売却するためには、臨床症状がない場合でもOCDの除去を実施した方が良い場合もありますので、馬の価値と手術経費等をオーナーや獣医師と良く相談することが大切です。現在、セリにおけるレポジトリーが普及し、レントゲンでOCDなどの所見を目にする機会が増えましたが、重要なことは、購買者側と上場者側の両方が納得して売買契約に至るということではないでしょうか。そのためには、両者がレポジトリーの活用方法について正しい知識を持つことが大切です。

※ 1 Osteochondritis Dissecans:離断性骨軟骨炎もしくはOsteochondrosis Dissecans:離断性骨軟骨症

(日高育成牧場 業務課 診療防疫係長 遠藤 祥郎)

コメント

この記事へのコメントは終了しました。