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2019年1月28日 (月)

JRA育成馬の購買方法

No.36 (2011年7月15日号)

 JRAでは「強い馬づくり」すなわち、内国産馬の資質向上や生産・育成牧場の飼養管理技術向上に貢献することを目的に、育成研究業務を行っています。ここで得られた成果は、ブリーズアップセールで売却後の競走パフォーマンスにおいて検証された後、広く競馬サークルに普及・啓発することとしています。今回は、育成研究業務のアウトラインとJRA育成馬の購買について紹介いたします。

JRAの育成研究
1)初期・中期育成
 生産から初期、中期育成期においては、いまだに多くの課題が残され、国際競争力を持つ資質の高い馬づくりのためには、さらなる生産育成技術の向上が求められています。例えば、「繁殖牝馬の不受胎」や「受胎後の胚死滅」および「流死産等の予防」による生産率の向上、「競走成績に影響を及ぼすDOD(発育期整形外科疾患)の予防」、「寒冷地における効果的な冬季の放牧管理やウォーキングマシンを含めた運動方法の確立」等です。これらの課題に取組むため、10頭の繁殖牝馬とJRAホームブレッド(生産馬)を活用しています。

1 冬季に昼夜放牧を行う1歳馬。わが国の気候に適した初期育成管理方法の開発が求められている。

2)後期育成
 JRAはこれまで、各種講習会の開催、『JRA育成牧場管理指針』の配布、BTCおよびJBBAの人材養成をはじめとした各種外部研修生の受け入れ等の活動によって、「昼夜放牧の普及」、「安全なブレーキング技術の導入」、「市場上場馬の展示方法の改善」、「若馬に対する坂路調教の応用」等、生産育成技術の向上に努めてきました。その結果、わが国の後期育成技術は飛躍的に向上し、レベルアップした競走馬の血統的資質や能力を十分に引き出すことができるようになっています。
 最近は、繁殖牝馬の受胎率向上に関する研究を応用した「若馬に対するライトコントロール法の応用」や効率的な栄養摂取を目的とした「オールインワン飼料の開発」さらには、1歳市場で購買した馬の「四肢X線所見や内視鏡検査と競走成績との関連」に関して抽せん馬時代から積み重ねてきた研究をとりまとめ、購買者がセリでレポジトリー情報を活用するための参考となる研究にも取組んでいます。後期育成に関する研究は1歳市場で購買した80頭程度の育成馬と生産した10頭以内のJRAホームブレッドを活用しています。

育成馬購買にいたるまで
 JRAが1歳市場で購買する馬は、育成研究、技術開発や人材養成を行ううえで、育成期間に順調に調教を行うことができることが必要です。購買に際しては、発育の状態が良好で、大きな損徴や疾病がなく、アスリートとして適切な動きをする馬を選別するようにしています。

1) 購買検査
 JRA育成馬の購買は複数名のチームで実施しています。チームには、競走馬の臨床経験が豊富な獣医・装蹄職員が含まれており、お互いに意見交換を行いながら候補馬を選定します。購買検査では、まず外貌を観察します。その際、蹄の状態を観察することができるよう、砂や芝生の上ではなく、平坦な場所で実施します。その後、馬の動きを観察するため、前望や後望から常歩で歩様を確認します。

2 せり会場での歩様検査

 一般的なセリに上場される1歳馬は、約2ヶ月間、十分な常歩運動を行うことで体を作ります。人手をかけずに体力をつけるためには、ウォーキングマシンでの運動は効果的です。しかし、セリで馬をよく見せるためには、引き馬での運動が不可欠です。つまり、行儀よく躾けられており、また、人の指示によってキビキビと歩く馬は、購買者から好感を持たれるとともに、購買後も騎乗馴致へとスムーズに移行することができます。「セリ馴致」と呼ばれるこのようなコンサイニング技術は、年々向上しています。
 HBAサマーセールは5日間で1200頭以上が上場されます。一日あたり250頭程度上場されるので、セリ当日は検査をする時間が十分ありません。したがって、JRAでは、事前に5頭以上繋養しているコンサイナーに預けられた馬を事前に牧場で検査しています。半分以上にあたる約600~700頭の事前検査を行っているので、セリ当日はコンサイナーで見ていない馬を中心に、十分に時間をかけて検査しています。

2) レポジトリー検査結果の確認
 セリ会場においてすべての馬を検査した後、候補馬のレポジトリーを確認し最終的な合格馬を選定します。ここでは、JRAで行っているレポジトリーのチェックポイントについてご説明します。
X線所見は、球節、腕節、飛節などの関節内に骨片やOCDによる軟骨片が遊離していないか、また、骨膜炎などの像がないか、を確認します。これまでの調査では約10%の馬にこのような所見が見られますが、これらは新しい所見ではなく、また、ほとんどが競走能力に影響を及ぼしません。しかし、このような所見がレポジトリーで見られた場合、再度、実馬を確認し、関節の腫脹、発熱、疼痛および跛行など、症状の有無を確認します。もし、このような臨床症状が見られる場合、慎重に購買を判断する必要があります。
 前肢の近位種子骨の状態も観察します。JRAでは、線状陰影の本数やその幅、形状によって種子骨をグレード分けして判定しています。種子骨の状態と競走能力との関連はありませんが、グレードの高い馬は靭帯炎を発症するリスクが高いことも分かっているので、このような馬を購買した場合、飼養管理や調教で注意をする必要があります。

3 種子骨のグレード評価とその保有率を示す。

 安静時の上気道(ノド)内視鏡所見では、若馬は喉頭蓋が薄く小さな形状をしているのが普通です。中には、調教中、ゴロゴロという呼吸音が特徴的なDDSPを発症する馬も見られますが、ほとんどが成長に伴い良化します。もっとも注意が必要なのは、ヒーヒーという吸気時に音を発する喘鳴症と関連がある喉頭片麻痺(LH:披裂軟骨が下垂)の所見です。JRAの調査によると、健康な1歳馬のうち16%の馬がG(グレード)1以上の所見を有することがわかっており、G2までは競走成績との関連はありません。披裂軟骨がまったく動かないG3では手術が必要です。なお、G0やG1でも喘鳴症の症状を呈する馬がまれにみられますが、咽頭虚脱など特別な疾病でなければ競走能力に影響はありません。

4 左が正常な内視鏡像。右は喉頭片麻痺(LH)G1以上の所見。

5 左がG1、右がG2の所見およびその保有率を示す。吸気時に左披裂軟骨がどの程度動くかによってグレード分けを行うが、いずれも競走能力に影響はない。

6 手術が必要なG3の症例、保有率は1%未満

 完璧な体型の馬はいないのと同様、レポジトリー所見をみるとなんらかの異常がみられるものです。現在、JRAでは生まれてから成馬になるまでの経時的な種子骨やノドの発育過程を観察することにより、より詳細な調査を行っているところです。これらの成績についてはまとまり次第、さまざまな場面を活用して紹介いたします。

  (日高育成牧場 業務課長 石丸 睦樹)

2019年1月23日 (水)

子馬の発育期整形外科疾患(DOD)

No.35 (2011年7月1日号)

成長期の骨や腱などにみられる病気
 サラブレッドが最も成長する時期は、誕生してから離乳するまでの期間です。健康な子馬の誕生時の体重は50~60kgですが、離乳が行われる6ヶ月齢頃には約250kgにまで増加します。成馬になったときの体重を仮に500kgとすると、出生時には成馬の体重の10%程度でしかないのに、わずか半年間で成馬の体重の50%にまで急成長することになるのです。このような急激な成長をみせるサラブレッドの子馬の骨や腱などに、この時期に特有の疾患を引き起こすことがあり、このような疾患を総じて発育期整形外科的疾患(DOD:Developmental Orthopaedic Disease)と呼んでいます。

DODには、どんな疾患があるの?
 DODの代表的な疾患には、離断性骨軟骨症(OCD)、骨軟骨症(骨嚢胞)、骨端炎、肢軸異常、ウォブラー症候群などがあります。これらの疾病の発症要因は、まだ十分に特定されていない部分も多いが、一般的に考えられているものとして遺伝的要因、急速な成長やバランスの悪い給餌(栄養)、解剖学的な構造特性、運動の過不足、放牧地の硬さなどが挙げられます。一方、近年の研究では、遺伝との関連が強く、競走能力向上のための遺伝的選抜はDOD発症率の低下と相反するものであるため、DOD発症率は増加傾向にあるばかりでなく、撲滅することは不可能であるとさえ考えられています。したがって、飼養管理方法を適切なものとし、発症した場合は軽度のうちに適切な処置を施すことが重要と考えられています。ここでは、DODの代表的な疾患である「骨端炎」と「離断性骨軟骨症」、さらに生産者を悩ますことの多い肢軸異常の中から「クラブフット」について、その病態と発生要因、対策などについて紹介します。

骨端炎
 子馬の骨のレントゲン写真をみると、骨の両端部分には隙間が写っているのが分かります(図1)。この隙間が骨端板と呼ばれる部分で、まさに骨が成長している場所になります。この骨端板は軟骨からできているため、ストレスに弱く、過度の負荷がかかると炎症が起きてしまいます。骨端板は馬の成長に伴い、肢の下の部分から閉鎖していきますが、生後2~4ヵ月齢の子馬が最も影響を受けやすいのが管骨遠位(球節の上)の骨端板になります。この部分の骨端板に炎症が生じると、球節はスクエア(四角)状になり、歩様も硬くなり、繋が起ってきてしまいます。次第に腱の拘縮が起こると、後述するクラブフット発症の要因になるとも考えられています。有効な治療法としては抗炎症剤の投与がありますが、根本的には痛みの原因となる要因を考え、取り除くことが重要になります。また、体重増加が大きい子馬に発症しやすいことが認められているため、母馬の飼料を食べていないかどうか、あるいは放牧地の硬さや放牧時間などをもう一度、見直してみる必要があります(図2)。

1_7 図1 球節の骨端板の位置(左写真:矢印)と骨端炎発症馬のスクエア状の球節(右写真)。
レントゲンで透けて見える骨端板は骨が盛んに成長している大事な部分であり、ストレスに弱い部分でもある。

2_5 図2 母馬について走り回る子馬
活発な母馬について走り回る子馬の運動量は母馬以上になり、骨端板に炎症を起こすこともある。

離断性骨軟骨症(OCD:Osteochondrosis Dissecans)
 OCDは関節軟骨の発育過程の異常で壊死した骨軟骨片が剥離するために生じる病変です。飛節や膝関節や肩甲関節、球節はこの疾患の好発部位となります(図3)。飛節部のOCDは軟腫や跛行の原因となることもあります。しかし、臨床症状がない場合は手術の必要はなく、大きな骨片は関節鏡手術により除去することで予後は良好です。大抵の馬は、その成長過程のある時期に、一つあるいは複数のOCDを持っている可能性があり、多くの場合は競走能力には影響がないといわれています。飼養者はOCDの存在部位や大きさ、調教や競走において問題につながる可能性があるのかどうかなどの情報を予め知っておくことが重要であると思われます。

3_3 図3 飛節関節内の脛骨中間稜に認めたOCD症例

12カ月齢の定期レントゲン検査で発見したOCD病変をCTスキャン検査で3次元解析すると、小さな骨片が関節内に遊離しかけている様子が確認できる。

クラブフット
 クラブフットとは、後天的に深屈腱が拘縮することによって蹄関節が屈曲した状態で、外見上ゴルフクラブのように見えることから、このような名称で呼ばれている肢軸異常の1つです。生後3ヶ月齢ころの子馬に多く発症し、特徴的な肢軸の前方破折、蹄冠部の膨隆、蹄尖部の凹湾、蹄輪幅の増大や正常蹄との蹄角度の差などの症状により4段階にグレード分けされています(図4)。

4_2 図4 クラブフットのグレード(Dr. Reddenの分類から)
グレード1…蹄角度は、正常な対側肢よりも3~5度高い。蹄冠部の特徴的な膨隆は冠骨と蹄骨の間の部分的な脱臼に起因する。
グレード2…蹄角度は、正常な対側肢よりも5~8度高い。蹄踵部に幅の広い蹄輪幅を認める。通常の削蹄により蹄踵が接地しなくなる。
グレード3…蹄尖部の凹湾。蹄輪幅は蹄踵部で2倍。レントゲン画像上、蹄骨辺縁のリッピングが認められる。
グレード4…蹄壁は重度に凹湾し、蹄角度は80度以上となる。蹄冠の位置は踵や蹄尖と同じとなり、蹄底の膨隆を認められる。レントゲン画像上、蹄骨は石灰化の進行により円形に変形し、ローテーションも起こる。


 原因としては「疼痛」が挙げられています。子馬は骨や筋肉が未発達なため、上腕、肩部、球節あるいは蹄などに痛みがあると、これを和らげるために筋肉を緊張させます。特に球節の骨端炎や蹄内部に疼痛がある場合、負重を避けるために関節を屈曲させ、その結果、深屈腱支持靭帯が弛緩します。この状態が一定期間続くと、深屈腱支持靭帯の伸展する機能が低下し、廃用萎縮の状態となり、疼痛が消失しても深屈腱支持靭帯の拘縮が残り、クラブフットを発症すると考えられています。
 一方で、必ずしも疼痛を伴わずにクラブフットを発症することもあることから、疼痛以外の原因もいくつか考えられます。たとえば、採食姿勢もそのひとつです。子馬の四肢は首の長さに比較して長いため、放牧地で牧草を食べる時には、極端に大きく前肢を前後に開く姿勢をとる様子が頻繁に認められます(図5)。この時、後ろに引いた蹄の重心は前方に移動することから、蹄尖部は加重により蹄がつぶれ、蹄踵部は加重が軽減することにより蹄が伸びやすくなり、これが蹄壁角度の増加を助長すると考えられます。どちらの肢を前に出すかは子馬ごとに癖があることが調査の結果分かってきました。1日の大半を放牧地で過ごす子馬の採草姿勢とクラブフット発症との関連性が解明されつつあります。

5 図5 子馬の採食姿勢
子馬の四肢は首の長さに比較して長いため、前後に大きく開いて採食する。どちらの肢を前に出すかは馬によって癖があり、常に後ろに引かれている蹄の重心は前方に移動し、蹄角度が増加する一要因になると考えられる。

軽種馬生産・育成技術の向上を目指して
 現在、JRA 日高育成牧場では、軽種馬生産や育成管理技術の向上を目指して、軽種馬生産者、獣医師、装蹄師、栄養管理者が情報交換しながらDODや肢勢異常に関する調査研究に取り組んでいます。これらから得られる成績は研修会などの場で紹介していきたいと思います。


(日高育成牧場 生産育成研究室 研究役 佐藤文夫)

2018年12月 6日 (木)

胎子の発育と発達

No.12 (2010年7月1日号)

初回妊娠鑑定のあと・・・
 獣医師から「とまってますね。」の言葉を聞けたときの喜びはひとしおです。しかし、その後の妊娠馬の検査は獣医師によって様々で、検診の時期や回数といった要素まで加えると、繁殖牝馬と腹の中の胎子の検査体制は千差万別です。そのうえ、全ての胎子の発育や発達が当たり前の順序で進んでいくとは限りません。双胎、奇形、臍帯や胎盤の異常、感染症など様々な要因で流産してしまったり、生まれても競走馬になれなかったり悔しい思いをすることもあります。今回は、そのような事態を予防したり早期に診断するために知っておきたい、胎子の発育過程について紹介します。

胎子への発達過程
 図1のとおり、受精卵から胎子へと短期間に大きく変化しながら発達していきます。この発達過程では、子宮内環境やホルモンの影響を受けやすく、早期の胚死滅はこの時期に発生します。また、遺伝的な奇形はこの時期から認められることがあります。

双胎(双子)の予防
 ほとんどの場合、馬の双子は二卵性です。これは卵巣で二つの卵胞がほぼ同時期に排卵した際に種付けをすると起こります。排卵後12日くらいから超音波画像診断(エコー)で観察できる胎胞と呼ばれる卵が2つあることで診断します(図2)。この後2つの卵は別々に子宮の中を移動しながら成長し、排卵後16日に子宮内で育つ場所を見つけて動かなくなります。このまま成長してしまうと、流産や何かと不利な双子が生まれてしまうことになります。
 これを予防するために、排卵後14日前後にエコー検査で双胎が見つかったら「減胎処置」を行います。この処置は、片方の胎胞を子宮の端に誘導して、圧力をかけて破砕します。「減胎処置をすると流産しやすい」なんて話を聞いたことがあるかもしれませんが、適切な時期に減退処置を行い、子宮の炎症を防ぐフルニキシンメグルミンを投与すれば、その確率は低くなります。

奇形の診断
 奇形の原因には、遺伝的因子の他、子宮の狭さや子宮内での胎勢といった環境因子があります。後者については妊娠期間に繁殖牝馬を太らせすぎないとか、適度な運動を課すといった予防方法が知られているものの、肝心な奇形の有無は出産してから分かるのが現状です。それでは、定期的なエコー検査で早期診断ができるかというと、今までのエコーでは非常に難しいものでした。
 JRAでは、ヒト医療で実用化されている3Dエコーを導入し、妊娠6カ月までの胎子を観察することに成功しています(図3:成績の一部は、今夏にケンタッキー州で開催される国際馬繁殖学学会で報告予定)。3Dエコーのメリットは、これまでのエコーで困難とされていた胎子表面の細部にわたる観察が、理解しやすい画像で簡単にできることであり、周辺牧場や近隣獣医師にご協力いただき、精力的に研究をすすめているところです。今後3Dエコーの普及が進むと、奇形胎子の早期発見が容易になってくると考えられます。

早期胚死滅の予防と予測
 排卵から50日前後までに胎子が消えてしまう早期胚死滅に関する研究から、繁殖牝馬のボディ・コンディション・スコアを適切に保ち、子宮の回復を待つために初回発情での種付けを見送る、などは、ある程度の予防効果があると考えられています。早期診断には、客観的かつ正確に子宮内部の観察ができるエコー検査が役立ちます。例えば、排卵後21日の胎胞の直径が平均より小さいとか、カラードプラー機能で確認できる胎子心拍数の急激な増加といったエコー検査で得られる様々な情報から、胚の死滅や胎子の死を予知するという研究も進みつつあります。

臍帯の異常
 臍帯にも様々な異常が観察されます。主として胎子が位置方向を変えることができる妊娠中期に起こり、臍帯捻転による胎子の酸欠や、臍帯が四肢に絡んで関節など骨格・肢勢異常の原因となることもあるようです。こういった臍帯や四肢に起こる変化も、研究段階ではありますが、前述した3Dエコーによって早期に発見できるようになると考えられます。

胎盤炎の早期診断
 妊娠後期に発生する流死産の原因の3割強を占めるとされるのが、胎盤炎です。主な原因は、細菌や真菌の感染であり、その結果、胎子と母馬の間の酸素や栄養の受け渡しを行う胎盤が機能しなくなります。外見的な診断では乳房の早期の腫れや漏乳があり、血液検査ではホルモンの異常な増減がみられます。エコー検査では、このような状態の胎盤の厚さは正常時の1.5倍になっていることが確認されているようです。こういった診断を組み合わせることで、迅速な治療を施せるようになってきています。

強い生産者・強い馬づくり
 妊娠中の繁殖牝馬へのエコー検査は不可欠な診断法として、世界でもその重要性が認識され、研究が続けられています。これからも、生産者と獣医師が一丸となって双胎や早期胚死滅を防ぎ、「強い馬づくり」、「安定した生産」のための研究が必要であると考えています。

(日高育成牧場 生産育成研究室 琴寄 泰光)

Fig1

Fig2

Fig3